橋田寿賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり第九部第四十九回=最終回

TBS系。橋田寿賀子ドラマ「橋田寿賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。
作(脚本):橋田寿賀子。音楽:羽田健太郎。ナレーション:石坂浩二。演出:清弘誠。プロデューサー:石井ふく子。第九部第四十九回=最終回。
この三月末で第九部が終了することは予て定められていたはずであるにもかかわらず今宵のこの二時間にわたる話を見る限り緻密に計画された最終回だったとはとても思えない。まるで急に打ち切りが決まって無理矢理に短縮したかのような終わり方。大井貴子(清水由紀)が父の大井道隆(武岡淳一)と一緒に中国に行くと云い出したのにも驚いたが、そもそも大井道隆が中国に行くと云い出したのも余りにも唐突だった。とはいえ従来このドラマで登場人物が急に姿を消す(=出演者が降板する)場合、大概はアメリカへの移転として説明されたものだったようだが、今回こうして中国への移転も新たな選択肢に加わったところに時代の変化を感じることができよう。
ともあれ、大井貴子と大井道隆が退場した以上、大井直子(夏樹陽子)と大井輝(大川慶吾[ジャニーズJr.])も退場だろう。このドラマには余り見ない性格の人々だったのが面白かったのに、残念なことではある。
もっと凄かったのは、高級料理店「おかくら」店主の岡倉大吉(宇津井健)の再婚相手かと見られていた小宮怜子(池内淳子)の唐突の退場だろう。亡き長男の嫁だった女とその再婚相手との夫婦が家に転がり込んできたので三人で一緒に暮らして一家の主婦をつとめることにしたので「おかくら」を辞したいという理由は、常識では理解し難い。これが通用するのは「渡る世間は鬼ばかり」が常識を外れた物語世界だからに過ぎない。
青山タキ(野村昭子)は小宮怜子の身勝手な決意に怒ってはいたが、その後、この件について岡倉姉妹と談笑していたところを見るに内心では安堵していたと思しい。森山壮太(長谷川純[ジャニーズJr.])が小島眞(えなりかずき)の失恋を内心では冷笑しているような様子だったのと似ている。他方、大井貴子の退場と同時に田口愛(吉村涼)が急に善人化したのも、素直な感情によるよりはむしろ思惑あってのことと見るべきだろう。