MR.BRAIN第二話

TBS社運開運祈念キムタク脳トレ土八ドラマ「MR.BRAIN」。第二話。
脚本:蒔田光治。音楽:菅野祐悟。演出:福澤克雄。主演:木村拓哉
このドラマの第一話については先週ここで少々酷評したが、今日は少し考えを改めてみることにした。その原因は、今日の午前中、HDD内に録画したままになっていた本年一月三十一日放送「SMAPがんばります」を編集してDVDへ保管するの作業を進める過程で「全力坂」と「仮面ライダーG」を改めて見たことにある。港区にある五十もの坂を一日かけて全力で駆け続けた木村拓哉は、改めて見てもやはり格好よかったし面白かった。約二十年前の「アイドル共和国」時代からSMAPを(断続的に断片的に)テレヴィの中に見続けてきて、当時から木村拓哉には魅了されながらも反発も感じていて、時々大嫌いになりながらも嫌いになれないで現在に至った…と書くと吾ながら物凄く気持ち悪いことを書いている気がするが、でも実際そういうわけで、二十年前のあっさりと爽やか美少年な木村拓哉も悪くはなかったが、現在の老け込んでしまったのに相変わらず若作りに余念のないジタバタ見苦しい木村拓哉も素敵に見えてしまう始末。ゆえに今週も見続けることにした。
もう一つ、「仮面ライダーG」を見て大喜びしつつも主演の稲垣吾郎に対しては嫉妬の炎を燃え上がらせずにはいられなかった木村拓哉の様子を見ていると、この「MR.BRAIN」というのは「仮面ライダー」の代替物として木村拓哉のために用意されたものではないか?と思えてきたということがある。彼が本当にやりたいのは特撮ドラマのヒーローであって、しかるに彼の周囲の御偉方は彼をあくまでも大人向け商売の道具になり得るゴールデンタイムの顔にしたいと考えていて、結局、そうした両者の折り合いの着いた地点がこの「脳トレ」の「刑事ドラマ」だったのではないのか?と想像してみてはどうだろうか。警察庁科学警察研究所の施設内の様子が何だか特撮ドラマにおける正義の味方の基地のように見えてしまう造りであるのも、裏面にそうした事情があるからではないのか?と想像すると、なかなか面白くなってこよう。(ただし本物の子供向け特撮ヒーロードラマというのは意外に物語に深みがあって、現在放送中の「仮面ライダーディケイド」など、「MR.BRAIN」よりも圧倒的に質が高いと思われるということは強調しておきたい。)
さて、今回の話の妙味は、既に亡くなったはずの殺人者が、死後もなお生者たちを操り、己の犯罪の続編を実行させたことの不気味さにある。俗に「死人に口なし」とは云うが、ここではむしろ、生者たちの心も身体も死者の意のままに動かされていたに過ぎないという点において、生者に生命がなく死者こそが生きていたのだ…とさえ云えるかもしれない。
そのような恐ろしい力を持つ殺人鬼の竹神貞次郎という役を演じたのは「仮面ライダーディケイド」の主題歌の歌手ガクトGackt。極めて不気味に演じたことで説得力が生じた。他方、彼に操られていた第二の殺人鬼、宮瀬久美子を演じたのは小雪。能面のような顔が、いかにも死者に操られた殺人鬼の感じをよく出していた。竹神を崇拝する杉山幸三を演じた石黒英雄が、あの種の正気を失ったような人物の役を演じるのを得意とすることは二〇〇七年度に放送された「仮面ライダー電王」において既に証明されている。