任侠ヘルパー第九話

フジテレビ系。木曜劇場任侠ヘルパー」。第九話。
脚本:古家和尚。演出:葉山浩樹。
介護事業を大々的に展開してきた大企業「ハートフルバード」の創業者、羽鳥晶(夏川結衣)が側近の反逆によって遂に代表取締役社長職を解任されたが、退任の挨拶のための記者会見におけるその言は、介護事業に関する一つの思想として(劇中の言ではあるが)説得力を持った。人は介護事業を老人のためのものとして語りたがるが、所詮それは介護に未だ縁のない気楽な者の楽観的な理想論に過ぎない。介護事業は老人のためのものである以前に先ずは、その老人の介護について背負い切れない程に重大な責任を負わされる立場にある家族を助けるためのものなのだ。介護を真に必要としているのは要介護者ではなく要介護者を抱えた者であるということは、今までの数話で描かれてきた。美容業界で成功したのち介護事業に乗り出した羽鳥晶の志はそこにあった。しかも、実業家としての羽鳥晶の希望は、なかなか遠大でもあった。介護が営利事業として成功し安定を得て広く利用されたなら薄利多売も可能になって多くの老人たちを受け容れることもできるようになるはずであるというところまで考えていたのだからだ。
あの不敵なヘルパーの和泉零次(山本裕典)が、隼会若頭で鷹山組々長でもある鷹山源助(松平健)の側近でもあるという事実は、先週の第八話で吾等視聴者にだけは既に明かされたが、今週、遂に彼自身が翼彦一(草なぎ剛)や黒沢五郎(五十嵐隼士)等にも真相を明かした。彼は鷹山組長の命により彼等「任侠ヘルパー」の監視役を任されていたのだ。だが、それが全てではないことを、流石に翼彦一だけは感じ取っていた。なにしろ和泉零次は五年も前から介護施設「タイヨウ」に勤務してきたのだ。当初は彼も「研修」として「タイヨウ」に配されたのか否かは、今のところ定かではないが、そこに五年間も留まって、一人のヘルパーとして働き続けているのは、あくまでも彼自身の「意志」によるらしい。しかもヘルパーとしての専門知識にも秀で、技術も確かであり、「タイヨウ」経営者の園崎康弘(大杉漣)に代って全体を統括する重責をも担う。なぜ彼はそこまでヘルパーであり続けようとしているのか、しかも少なくとも表面上はもはや「任侠ヘルパー」でさえなく、一人の有能で真面目な普通のヘルパーであり続けたいのか。その解明もまた今後の展開に待たなければならない。