月九ブザービート第九話-最終章前の一つの終わり

フジテレビ系。月九ドラマ「ブザー・ビート」。第九話。
脚本:大森美香。演出:永山耕三
全十一話中の第九話だが、次週の第十話が「最終章」と銘打たれる。最終回ならぬ最終章。何が何でも視聴率を稼ぎたい!という思い、視聴率さえ稼げるなら恥も外聞も内容も捨てる!という思いの強さを感じる。もがけば何とかなるというわけでもないこと位、TBSを見れば一目瞭然なのに。
予て同居中で交際中の秦野秀治(溝端淳平)と海老名麻衣(貫地谷しほり)の両名は、宇都宮透(永井大)を家に招いて、そして告白した。予て海老名麻衣が宇都宮透に片想いだったこと、しかるに現在は秦野秀治と麻衣の二人で交際中であることを。海老名麻衣からの熱烈な好意にどう反応すべきか悩んでいた様子の宇都宮透は安堵の表情で二人の交際を認め、喜んで祝福した。
宇都宮透の爽やかさと包容力、そして三人の関係の和やかさをよく描いて、この全体としては愛欲の泥沼ばかりを描こうとするドラマの中にあっては稀な、明るく目出度い場面ではあったが、問題は、海老名麻衣がこの席上、宇都宮透の本当の想い人は実は川崎智哉(伊藤英明)ではないのか?という疑惑の真相について本人に確認したところ、本人が笑ってそれを否定したことだ。彼には前から片想いの女性がいて、しかるにその人には交際相手がいるので諦めているらしい。その相手が七海菜月(相武紗季)である可能性は極めて高い。ともあれ、見落とせないのは川崎智哉に対する彼の片想いに関する疑惑は以前から周囲で囁かれてきたらしい上、彼自身もそのことを知っていたという事実だ。ゲイと見られることには慣れていたらしい。恐らくは彼本人に問い質す人々が他にもいたのだろう。問い質されても動じることなく笑い飛ばせる彼の爽やかさも素晴らしいが、これで、このドラマの楽しみが消えてしまった。最終章ならぬ最終回まで粘ってみてもよい話題だろうに、制作者は視聴者のニーズを判っていない。
しかし考えてみれば、宇都宮透の問題と秦野&海老名の問題に注目してきた者にとっては、来週どころか既に今週が一つの「最終章」だったのかもしれない。