仮面ライダーW(ダブル)第八話

東映仮面ライダーW(ダブル)」。
第八話「Cを探せ/ダンシングヒーロー」。
脚本:荒川稔久。監督:田崎竜太
探偵青年の左翔太郎(桐山漣)と一緒に「二人で一人の探偵」を営んでいる彼の相棒、超天才少年フィリップ(菅田将暉)が、大暴走して翔太郎に大迷惑をかけつつも、予想外の奇策で大活躍も見せた今回の事件。この事件を通して鳴海亜樹子(山本ひかる)はフィリップの意外な側面を新たに発見した気になっていたが、どうやら翔太郎にとってはそれは新発見でも何でもなかったようだ。
実際、地球上のあらゆる知と技術と情報を脳内で検索して直ぐに身につけることのできるフィリップの好奇心と探究心が気まぐれな一時の熱狂でしかないことは第一話において既に描かれていた。
翔太郎は今までも幾度も、この種の事態に付き合ってきたのだろう。「怪我の功名」では済まなかった事例もあったのかもしれない。「フィリップ君を変えてくれそうな気がする」…という無用の期待感を鳴海探偵事務所長の亜樹子に抱かせてしまった今回のフィリップの暴走する「情熱」について、「何かにのめり込んだときのあいつは、迷惑以外の何物でもないのだ」と断言できてしまえる翔太郎こそは真にフィリップの理解者であるのだ。
もう一つ興味深かったのは、「二人で一人」の仮面ライダーWへの変身においては一見、翔太郎が主導権を握り、フィリップがそれに合わせているかのようだが、実際にはフィリップが主導権を握ることもあることが改めて描かれたところだ。「カリスマ高校生ダンサー」の稲本弾吾(森崎ウィン)を交え、伝説の技「ヘヴンズトルネイド」をも繰り出してコックローチドーパント伊刈(片桐仁)を翻弄してみせた展開がそれだ。「最高のパートナー」は一方通行の関係ではなく、互いを助けて高め合う関係であることを物語る。
さらにもう一つ見逃せないのは、翔太郎の探偵業における「極めてアナログな遣り方」が改めて描かれたこと。事件との関係を窺わせる同人誌マンガの存在を知ったのは情報屋からの提供によるが、その頁をめくって画中の風都の風景を眺めてゆく中で重要な手がかりを発見した彼の勘のよさは、過去の偉大な名探偵にも匹敵し得ないだろうか。
他方、どこまでも惨めだったのは、秘密結社ミュージアムを支配する園咲家の「自慢の婿」になるつもりだった園咲霧彦(君沢ユウキ)。先週の第七話では、園咲家の当主、義父の園咲琉兵衛(寺田農)から、飼い猫ミックにも劣る!と冷酷にも判定されてしまったが、今朝の第八話では妻の園咲冴子(生井亜実)からも「期待しない」と宣告されてしまった。「自慢の婿」どころか、早くも捨てられそうになってきた霧彦。
起死回生を図った霧彦は「ゴキスター」を自称するコックローチドーパント伊刈の活躍に望みを託したものの、当の伊刈は仮面ライダーどころか高校生ダンサー稲本弾吾にまでも愚弄されて負ける始末。挙句の果てに、伊刈を逮捕した風都警察署の担当官は、同じく弾吾に「雑魚」扱いをされた真倉俊(中川真吾)だったのだ。霧彦にとっては期待の星だったはずのゴキスターが消え去り、伊刈が「ナマクラ刑事」こと真倉刑事に逮捕されてゆくのを遠くから見送りながら、「次こそ…。見てろ!」と捨て台詞を呟いて去る霧彦の悔しそうな顔。でも、目に涙を溜める程ではなかったようなので、まだ大丈夫。