傍聴マニア09第四話

日本テレビ系。ドラマ「傍聴マニア09」。第四話。
原作:松橋犬輔北尾トロ。脚本:山岡真介。演出:本田隆一。
今回も裁判二件。内一件目の裁判では北森夫(向井理)が一人で傍聴した。傍聴席の中央に座し、隣の座席に荷物を置いて山野鳥夫(六角精児)のための席を確保しつつ、その到着を待っていたが、何時まで待っても姿は見えず、代わりにどう見てもカタギではない強面の集団が続々と入室して傍聴席を占拠し始め、気付けば北森夫一人を除いて全員がその種の人々。
ここでの見所は、一人で法廷内にいたときの北森夫の、何だか待ち遠しそうな健気な様子と、暴力団員に取り囲まれてしまったときの彼の、心細くて怯えたような様子にある。その直後に寄った何時もの喫茶店での、店員に要らぬ誤解を与えてしまったらしいと気付かされたときの「もうヤダ…なんか疲れたなあ…」という呟きも含めて、何れも一人でいることの寂しさ、心細さの表出として見ることができるかもしれない。
それが、まさか、都会で一人で生活することの孤独感や、無職で生計を立てることの不安感とも相俟って、二件目の裁判の傍聴の果てに彼が発した「人をおかしくするのは、孤独なのかもしれませんね」という感慨に繋がってゆくとは思わなかった。煩わしい人間関係を嫌って孤独を愛して普段は生きているような者でも、時折、孤独の寂しさに恐怖を感じる夜もある…というところを実にリアリスティクに描いていた。
あの夜、どうでもよさそうな用件で唐突に北森夫に電話をかけてきた山野鳥夫は、あのどうでもよいような用件をあのときは本当に気にしていたのか、それとも、喫茶店で何だか様子のおかしかった北森夫に取り敢えず声をかけておきたいと思い立ったのか、否、意外に彼自身も孤独を感じていたのか。