傍聴マニア09第七話

日本テレビ系。ドラマ「傍聴マニア09」。第七話。
原作:松橋犬輔北尾トロ。脚本:山岡真介。演出:仁木啓介。
今や傍聴マニアと化した北森夫(向井理)の、傍聴仲間の織田美和(南明奈)に対する叶わぬ恋のドラマを描くのか?と思わせておいて、実際に描かれたのは意外にも、かつて高校時代の織田美和が目の当たりにした悲しい事件の回想を通しての、東京地方検察庁の美人検察官「ビューティー星川」こと星川梨沙子(吉田羊)と織田美和との出会い、そして、傍聴マニア山野鳥夫(六角精児)と織田美和との出会いのドラマだった。
山野鳥夫は、気の合う仲間になり得る人を瞬時に見出す達人なのだろうか。かつて法廷の傍聴席で涙を流していた織田美和に白いハンカチを差し出して慰め、今は、裁判になんか何の興味もなかった北森夫に声をかけて立派な傍聴マニアに変えてしまった。見た目は冴えない中年男に過ぎない山野鳥夫がどういうわけか遥か年下の織田美和にとって大切な友になり得ている事情は、仲間を見つけ出す彼の洞察力によって了解できるのだ。
北森夫が抽選に当った埼玉地方裁判所における裁判員裁判の傍聴券を山野鳥夫が盗んで去ったあたりにも、その一端が表れていたと云える。
もっとも、山野鳥夫と織田美和との間の、何年も前に始まった永くて深い友情の関係にあっさり溶け込んで仲間入りできてしまった北森夫の人格力もなかなかのものではないだろうか。
なお、新たに判明した重要な事実として、北森夫は「ポッチャリして丸顔の人」を好みの「タイプ」にしているということがある。山野鳥夫と喫茶店「オシラス」店員(井上佳子)はそれぞれ、自分自身がその条件に合致していると感じた。「おまえ、まさか…、俺に惚れてんのか?」と訊いた山野鳥夫に、北森夫は「そんなわけないでしょ!」と直ぐに反論したが、両名の遣り取りを傍聴していた店員は、北森夫の「タイプ」は自分ではなく山野鳥夫であると思い込んでしまったのか、自分には出る幕がなさそうであると感じて落ち込んでいた様子だった。この店において北森夫は物凄く誤解され続けている。
初のデートに臨んだ北森夫は、髪型も表情も何時になく凛々しかった。
被告人(徳山秀典)は、己に殺意がなかったことを陳べる際には病み疲れたような顔をしていて、己の言い分を陳べ終えたあとは勝利を確信したかのような不敵な顔をしていたが、検察官ビューティー星川から痛いところを突かれたときには、まさしく地獄へ転落してゆく人のような顔をしていた。