アンタッチャブル第九話=最終回

テレビ朝日系。ドラマ「アンタッチャブル事件記者・鳴海遼子」。
脚本:橋本裕志。音楽:井筒昭雄。演出:唐木希浩。第九話=最終回。
多くの被害者を出した「名なしの権兵衛」事件は一応の解決を見たが、謎が全て解明されたわけではない。未解決のまま残されている主な謎を三点だけ挙げよう。
(一)新党世界の結成の祝宴の会場において「名無しの権兵衛」がテロリズムを企てる可能性を、鳴海遼子(仲間由紀恵)はどのようにして予感したのだろうか。確かに新党世界は、地球党による権力の掌握を企てる「名無しの権兵衛」と日本福祉募金振興会にとって打倒しておかなければならない強敵であるには違いないが、そのことはテロリズムを予感させるわけではない。なぜならテロリズムを惹き起こすことは「名無しの権兵衛」の常套の手法であるとは云えないのだからだ。
(二)警視庁は、新党世界の結成の祝宴の会場において何事かが発生する可能性をどのようにして察知したのだろうか。そして当の起こり得る事件が毒ガスを用いたテロリズムであることをどのようにして確信し、背後にある事情をどのようにして理解したのだろうか。起こりつつある事態の意味を理解した契機については、劇中に描かれた通り、鷹藤俊一(佐藤智仁)の決死の行動による真相の暴露がその役割を果たしたと考えてよいのかもしれないが、この場合、鳴海洸至(小澤征悦)の陰謀によって指名手配犯にされてしまっていた鷹藤俊一の言を、警視庁の大川刑事(長谷川初範)はどうして信用してよいと判断したのかが不可解だ。そもそも、あの祝宴の会場で何事か重大な事件が発生する危険性を警視庁が察知していたのでもない限り、たとえ大勢の現職の国会議員を構成員にしているとはいえ政党の一に過ぎない新党世界の結成の祝宴の会場を、警視庁の刑事たちがあんなにも大勢で厳重に警備すること自体があり得ないことではないだろうか。
(三)日本福祉募金振興会の永倉栄一(寺島進)は、どうして鳴海洸至に逆らえなかったのだろうか。確かに鳴海洸至はとんでもなく危険な闇を胸中に抱えた人物ではあったが、所詮は単なる妄想家でしかない。強大な財力に裏付けられた現実世界への影響力を有するのは永倉栄一の側であって、鳴海洸至はそれを利用し、意のままに操っていたに過ぎない。永倉栄一の社会的な力があれば鳴海洸至を抹殺することもできたはずだ。結局のところ永倉栄一がそれだけ小物だったということだろうか。
なお、逮捕された鳴海洸至を乗せた警察の車両がどういうわけか途中から暴走して海へ飛び込んでしまった謎の深さについては、敢えて指摘するまでもなかろう。
ところで、今この番組の公式サイトを見て、先週の第八話に登場した天才将棋少年の葵慎一郎を演じた子役が、「アイシテル」ではキヨタンではなく美少年の方の少年を演じ、「仮面ライダーW」では左翔太郎(桐山漣)の少年時代を演じた嘉数一星であることを知って驚いた。