仮面ライダーW(ダブル)第十八話=園咲霧彦篇としての第一部の完結

東映仮面ライダーW(ダブル)」。
第十八話「さらばNよ/友は風の彼方に」。
脚本:長谷川圭一。監督:諸田敏。
園咲霧彦(君沢ユウキ)の最期は、青年探偵物語におけるハードボイルド探偵のライヴァルに相応しく、実に含蓄に富んで恰好よかった。
秘密結社ミュージアム園咲家の底知れぬ闇を知って、そこから逃れようとした彼は、そこの幹部である彼の妻、冴子(生井亜実)から制裁を受け、瞬時に燃え尽きた。だが、まさしく燃え尽きようとする一瞬、彼は己の真の信念を呟いた。「風都…、やっぱり良い風が吹くなあ…」。そして彼は灰と化して、その灰は風都の風に乗って去った。
この格好よさは、これまでの己の所業が己の信念に反するものだったことを知らされ、信じていた義父の園咲琉兵衛(寺田農)に初めから裏切られていたことを知らされ、飼い猫ミックに襲われ、それでも、園咲家の真実を何も知らぬ義理の妹の若菜(飛鳥凛)からは激励されて、最後にだけは宿敵の仮面ライダーWと手を結んででも己の信念に従って正義をなし得たものの、結局は愛する妻にまで裏切られて殺されて捨てられた惨めな男の、どうしようもない恰好悪さをも含めた上での恰好よさであると云わなければならない。
それは丁度、彼のライヴァルであって、そして最後には最高の友でもあったハードボイルドならぬハーフボイルド探偵青年、左翔太郎(桐山漣)の恰好悪い格好よさにも通じるのかもしれない。
思えば、翔太郎と霧彦との関係は徐々に深化を遂げてきたが、最高の友になり得る可能性は早くから見えていたと云えるかもしれない。両名とも、生まれ育った風都の街を心から愛している似たもの同士だからだ。その意味で、今朝の話の前半における戦闘は、何と云おうか、詩情に満ちていた。二人で一人の仮面ライダーWにおける翔太郎の相棒フィリップ(菅田将暉)がファングの力でナスカ=霧彦に止めを刺そうとしたとき、翔太郎はその相棒の腕を引き止めた。意外な展開に驚いて「なぜ…止めた?」と訊いた霧彦に、「さあな…、ただ…、あれが、眼に入っちまって…」と答えた翔太郎の眼前には、小学生時代の霧彦がデザインして応募して採用された風都のマスコットキャラクター「風都くん」の看板があった。多分この瞬間、フィリップは「とても不合理だけど君らしい答えだ」と思ったろう。
物語「仮面ライダーW」の第一部は、園咲霧彦篇として終結した。