新番組NHKみんなでニホンGO

今宵からの新番組、NHK総合「みんなでニホンGO!」。
先月で終了した「ブラタモリ」に代わる番組だが、趣は大きく変わった。でも、なかなか興味深い話題は多かった。例えば、現代の若者語と思われている「ウザイ」は、実は中世近世に広く使用されていた語「ウザウザ」に由来するとか。これは「ウジャウジャ」の同義語で、東京多摩地区の方言では今でもその意味を表す語として「ウザッタイ」が使用されているとのこと。一地方の老人たちの方言「ウザッタイ」から若者語「ウザイ」へ変容してゆく契機となったのは、一九八〇年代、東京の中心部にあった大学が多摩地区へ続々移転し、大勢の若者たちが多摩地区と都心部とを盛んに往還するようになったこと。人気マンガの台詞にも取り入れられて「ウザッタイ」は普及しつつ、用法を微妙に変化させ、近年それが「ウザイ」へ略されるに至ったのだ。
同じく近年の流行語「エロ」も、昭和初期には「モダンガール」や「職業婦人」を形容するための最先端の語として好意的に使用されていた。淡谷のり子も「エロ行進曲」を歌唱していた。そのような語が一転、例えば「エロオヤジ」という語に使用される場合の「エロ」のような否定的な意味を担うようになった契機は、警視庁の「エロ取締規則」施行にあったらしい。どういうことだろうか。番組内では確とは説明されなかった気がするが、要するに、戦時下の状況において欧米的な価値観が警戒され、禁じられた結果、禁じられた快楽を表現する語へ転用されたということだろうか。
なお、「全然」のあとには「ない」という否定の語が伴われなければならない!というのは迷信に過ぎないことも明らかにされていた。明治の文豪たちの文章にも「全然」のあとに肯定の語が伴われる事例が少なくないことからそれは明白であるとのことだが、実際、明治期の雑誌等を読んでも、「全然」はむしろ肯定の語を伴うのが自然であると云えるように思われる。日本語として全く間違っていない用法がどういうわけか間違った用法であるかのように思い込まれてしまった理由は、戦後の若者語の中で「全然」が多用されたのに対して当時の老人たちが反発したことにあったらしい。云うなれば、伝統文化を知らぬ老人たちが伝統文化を受け継いでいた(と云えなくもない)若者たちを否定した結果として、間違いが広まってしまったわけなのだ。