素直になれなくて第九話-玉山鉄二乙女演技
フジテレビ系。ドラマ「素直になれなくて」第九話=最終幕序章。
リンダ(玉山鉄二)の行動と死に関しては二つの解決できない疑問がある。解決できない所以を語ろう。
(一)リンダはどうして、ナカジ(瑛太)の前から姿をくらますために、自殺までも図らなければならなかったのか。理解し難い問題だ。なぜならナカジは居眠りしていた己に抱き付こうとしていたリンダの行為に対して、流石に驚いてはいたとはいえ、必ずしも拒否感や嫌悪感を示したわけでは(少なくともあの時点では)なかったのだからだ。リンダの性を嫌悪していたのはリンダ自身であるかもしれない。それをホモフォビアと呼んでもよいだろうが、そうであればリンダはどうして、ナカジが居眠りしている隙にナカジに背後から抱き付くというような大胆な行為に出ることができたのか。己の性を嫌悪する彼が己のそのような性欲と行為を制止できなかったことこそ、最も理解し難い。
(二)このことに関連して、リンダはどうして、あの年齢(二十五歳前後か)になるまで己の性について確と自覚することを得なかったのか。ゲイに関する情報が一般社会に普及していなかった時代であれば兎も角、既にそうした情報が一般社会に広まり、ゲイ男子が世の中のどこにでも存在し得るということが知られるに至っているかと思われる現代において、しかも世界屈指の大都市に居住する彼が、己の性について何一つ自覚することもなく二十年以上を過ごし得ていたということは到底理解し難い。
他方、第一話の時点ではゲイ男子の気配こそあれ乙女風な雰囲気まではなかったはずのリンダがここ暫くの間に一気に乙女風に変化したことは、必ずしも不可解であるわけではないような気がする。自覚が人を変えるからだ。乙女風の仕草と表情に関して玉山鉄二は過剰に雄弁だった。これが成宮寛貴であればリアリスティクに抑制して現実的な隠れゲイ男子を演じてみせるところだろうが、玉山鉄二は完全に乙女になり切っていた。