新番組-美咲ナンバーワン第一話

今宵からの新番組。
日本テレビ系。水曜ドラマ「美咲ナンバーワン!!」。第一話。
この物語の主人公は天王寺美咲(香里奈)。水商売の世界から教育界へ転向し、御堂学園高等学校の教員として活動を始めた。主人公がもともと水商売の世界で頂点を極めた人であるという事実を知るのは、職場内では同僚の三国武志(田中圭)と校長の玉造敏蔵(布施明)のみ。彼等の遣り取りがこの学園ドラマの面白いところだった。
気になるところは、ドラマの展開がドラマの設定と上手く噛みあっていないのかもしれない点だ。少なくとも今宵の第一話を見る限り熱血教師が痛快に事件を解決する話を志向した作であるかのように見えたのに、必ずしも痛快な解決を見たわけではなかったからだ。
単純明快で痛快な勧善懲悪のドラマが成立するためには、善を勧め、悪を懲らしめることを可能にするような圧倒的な力が必要だ。
例えば、「水戸黄門」の主人公には徳川御三家の一である水戸の中納言家の権威、さらにその背後にはもちろん徳川将軍家の威光があり、「暴れん坊将軍」の主人公には(徳川将軍その人であるにもかかわらず意外にも徳川将軍の権威よりは)わずか三人だけで何十人もの武装集団を次々に斬り捨てることのできる剣術と腕力がある。テレヴィドラマ「ごくせん」の主人公ヤンクミ(仲間由紀恵)は水戸黄門ではなく暴れん坊将軍に近い。何十人でも何百人でも殴り倒し得るのみならず頑丈な倉庫の扉を倒し屋根を破壊し得る程の腕力の持ち主であり、ゆえに暴力的な悪に対しては、それがどれ程の大集団で、どれ程に悪質であろうとも常に無敵であり得る。
今日から始まった「美咲ナンバーワン」には原作の漫画があるようだが、それは果たして勧善懲悪の物語であるのだろうか。少なくとも今宵の第一話を見る限りテレヴィドラマ「ごくせん」に極めて近いかのような印象を受けたが、それはもともと近かったからであるのか、それとも近くもないものを近付けた結果であるのか。何れにせよ勧善懲悪の物語として今後も進展してゆくのだとすれば、主人公の天王寺美咲は懲悪のための力の不足に常に悩まされることになりかねない。なぜなら時代劇における貴人のような権威もなければヤンクミのような腕力もないからだ。
九条和真(藤ヶ谷太輔)&湊亮介(北山宏光)等の通っている御堂学園高等学校は富裕な家庭の子女のための進学校だが、そういう学校に通える程の少年たちが、少々校内で落ちこぼれた位であんなにも自暴自棄になるものだろうか。「ごくせん」に出てきたような、学業も思わしくなく家庭も富裕ではない少年たちの場合はそもそも選択肢が限定されていて、入学できる学校も限られてくるが、富裕な家庭の子女であれば選択肢が数多あり、落ちこぼれるという事態は殆どないはずだ。