渡る世間は鬼ばかり第十部第三十六話

TBS系。橋田寿賀子ドラマ「橋田壽賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。
最終部=第十部第三十六話。
なぜか再び野田弥生(長山藍子)の家の話。それが今宵の大半を占めた。
野田佐枝(馬渕英俚可)は毎日一日を殆ど家の中のみで過ごして家事のみに追われる生活に、実は疲れているのではないのか?と感じていた実子の野田良武(吉田理恩)が、母子二人で一緒に野田家から出てゆこう!たとえ貧しくとも生き甲斐のある生活をした方がよい!と提案したのだ。野田佐枝は野田家を出る意こそ皆無であるとはいえ、家事のみに追われるよりは何か生き甲斐を感じることのできる仕事に就きたいと願望しているのは間違いなかった。
野田弥生は野田佐枝の話を聴いた上で、一体どのような仕事に就きたいのかを訊ね、子どもたちに接する仕事であれば生き甲斐を感じることもできるのではないかと思うとの回答を得るや、北川保育園で先ずは雑用係から始めてはどうかと提案するに至った。そこは野田弥生自身がボランティアの看護師をつとめている保育園であり、早速にも翌朝、そこの園長であり保育士である北川智子(水町レイコ)に相談したところ、その翌朝には面接試験を行うことに決まった。結果はもちろん合格。さらにその翌朝から早速、野田佐枝は働き始めた。
野田佐枝が再び社会へ出て働く件をめぐり、野田家では家事の分担に関する調整が行われた。今後、毎週月曜から土曜までの六日間の、野田家の朝食と弁当と夕食の準備をはじめとする家事に関しては、野田弥生と野田佐枝に、野田良(前田吟)の下で庭師として働く竹下美雨(京野ことみ)をも含めた三人で、各二日間を引き受ける当番制を採ることに決定したのだ。野田家の家事に新たに参入することになった竹下美雨は、誰が最も安価で美味の夕食を拵えることができるか競争してはどうか?と提案し始める程に、かなり浮かれている様子だった。
こうして野田家に急に生じた事件は一話の内に呆気なく解決してしまったわけだが、似たような展開は、六月十六日放送の第三十三話にもあった。
あのときも野田家に急に事件が生じて、呆気なく解決した。しかもその終盤には、野田佐枝の当面の就職先を北川保育園に求めてはどうかという話も既に出ていたし、野田家の家事を野田弥生と野田佐枝と竹下美雨の三人で分担してもよいのではないかという話も、さらにその三人で誰が最も美味な夕食を拵え得るかを競争してはどうかという話も出ていた。要するに、今宵の第三十六話の大半は、第三十三話の繰り返しのようなものでしかなかったのだ。既視感に富んだ話だったと云わざるを得ない。
ところで、小島眞(えなりかずき)の上海への旅行には、長谷部まひる(西原亜希)も同行することになった。小島眞から旅行の予定を詳しく聴取していた上司の長谷部力矢(丹羽貞仁)が、自身の妹を騙すようにして同行させた結果に他ならなかった。小島眞を自身の妹と結び付け、義弟にすることへの長谷部力矢の執念の強さには、恐れを抱かずにはいられない。