渡る世間は鬼ばかり第十部第四十五話

TBS系。橋田寿賀子ドラマ「橋田壽賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。
最終部=第十部第四十五話。
最終回が迫りつつある中、今宵の第四十五話には驚異の急展開があった。大急ぎ話をまとめ始めたかのようでもあった。
なにしろ小島眞(えなりかずき)と大井貴子(清水由紀)の両名が、森山壮太(長谷川純[ジャニーズJr.])と長谷部まひる(西原亜希)に説得されて、ついに結婚を改めて約したのだ。これまで長期間にわたり解決しようもない程に混迷の度を深めるばかりだった両名の関係が、わずかな時間の内に逆転し好転し、嘘のようにあっさり解決を見るに至ったのだ。
森山壮太と長谷部まひるの作戦を成功させた要因の一つとして、長谷部まひるの兄であり小島眞の上司でもある長谷部力矢(丹羽貞仁)の果たした役割も見逃せない。しかも長谷部力矢は、もう一組、森山壮太と長谷部まひるの仲を急展開させる上にも大きな役割を果たしつつあると見受ける。
意外なことにも、森山壮太と長谷部まひるの恋は、小島眞と大井貴子の恋よりも確りと、丁寧に、分かり易く、しかも自然に描かれてきたように思われる。描くために割かれた時間は比較にもならない程に短くとも、極めて率直に、的確に、印象深く描かれてきたと云ってよい。小島眞と大井貴子の奇妙な恋を何とか成就させるべく力を合わせて奮闘することを通して森山壮太と長谷部まひるが互いの魅力に気付かされてゆく過程は、かなり説得力ある仕方で描かれてきた。橋田寿賀子の真の筆力は、本流から外れた脇役の描写においては健在であると知る。
森山壮太と長谷部まひると長谷部力矢の三人が、飲み屋のカウンターの片隅で祝杯を挙げながら、幸福な人生とは何かを熱く語り合っていた場面には、普段のこのドラマとは大いに異なった趣、普段のこのドラマには感じることができないような、打算も陰謀も嫉妬も卑屈もない素直さと明るさと爽やかさがあって、それがまた面白かった。