家政婦のミタ第七話

水曜ドラマ「家政婦のミタ」。第七話。
家政婦の三田灯(松嶋菜々子)は阿須田家の人々のために、云い付けられたことを全て遂行するだけではなく、あらゆることを常に先回りして配慮して最も望ましい仕方で対応してみせる。そのことについて阿須田恵一(長谷川博己)から感謝の言葉を伝えられた三田灯は、「それは亡くなった奥様に云うべき言葉だと思います。私は奥様のやり方を真似ているだけなので」と云い返した。
三田灯のこの言には軽い衝撃があった。なぜなら三田灯がこのように自身の思想を表現することは稀にしかないからだ。もちろん三田灯は阿須田恵一の亡くなった妻を知っていたはずがなく、「やり方」を伝授されたわけでも探究し得たわけでもない。何事にも無神経で無頓着な彼が一流の企業で恥をかくことなく活動できるためには妻の徹底的な配慮と対応が不可欠であると見た上で、家政婦として最高水準の業務遂行能力によって、妻の逝去に伴う配慮と対応の現在の不在を補ってみせているのだ。そのことをこれまで三田灯はあくまでも家政婦の業務として引き受けて黙々と遂行してきたが、今回の三田灯はそのことが、亡くなった人が持っていた愛を代行するものでしかないことを明言した。これは一つの視覚であり思想であるだろう。
今回の三田灯は「差し出がましい」ことを行うところがあったが、実のところ前回の「それはあなたが幸せだからです」という言も含めて最近の三田灯には「差し出がましい」言動が目立ち始めた。あまりにも多くの難問を抱えた厄介な家庭である阿須田家の人々と日々接して、阿須田家の人々からあまりにも愛され過ぎてしまっている結果、大昔に捨て去ったつもりで抑え込んでおいた心をもはや抑え切れなくなっているのだろうか。
阿須田家の幼い末の妹の阿須田希衣(本田望結)は、幼稚園の演劇の発表会で主演に抜擢され、大いに練習にも励んでいたにもかかわらず、阿須田恵一の子供染みた言動に起因する騒動の影響とはいえ、他の幼児の母親が主演の交代を強く要求した結果として降板させられた。しかし、かねて妹の芝居の練習にも付き合い続けてきた姉の阿須田結(忽那汐里)と兄の阿須田翔(中川大志)と阿須田海斗(綾部守人)は、妹と一緒に家で家族だけで発表会をやり直すことにして、父親の阿須田恵一を家に連れ戻してその芝居を上演し、唯一の観客である父親に見てもらった。実によい兄弟だが、これは妹のための行為であると同時に、家族のため、家族の再結成のための行為であるだろう。家族の再生は兄弟の奮闘と団結によって生じている。