仮面ライダーフォーゼ第十四話

仮面ライダー生誕40周年記念作品「仮面ライダーフォーゼ」。
第十四話「毒・針・猛・襲」。
天ノ川学園高等学校の生徒、三浦俊也(水野真典)の抱えていた問題とは一体何であったのか?そしてその解決とは一体どういうことだったのか?意外に解りにくい。
第一話から第二話にかけてゾディアーツに変身して暴れていた彼は、仮面ライダーフォーゼ=如月弦太朗(福士蒼汰)によって退治され、救出されたあと、登校拒否の状態に陥っていた。その原因は何だったのか。学校を嫌がっているわけでも恐れているわけでもなく、学校に化け物がいることを恐れているわけでもなかった。ゾディアーツに変身するための装置(「スイッチ」)を、その化け物が差し出してくることを恐れているわけでさえもなかった。彼が真に恐れていたのは、ゾディアーツへの変身の能力を再び獲得することの誘惑に抗しきれないに相違ない己の弱さに他ならなかった。
変身の能力を獲得することには云わば中毒性があり、彼は己が既に中毒の状態にあることを思い知らされることをこそ恐れていた。
そうであれば彼はそのような恐怖心をどのように克服し得たのか。
如月弦太朗という新たな友人を得たことによってだったか。それも一応あるだろうが、もっと重要な役割を果たしたのは、かつて情熱と楽しさに満ちた学校生活を送っていたことを思い出し得たことだった。彼はそれを、恋人の山本麻里(石橋菜津美)が撮影して記録しておいてくれた自身の笑顔の写真を見せられたことで、ようやく思い出し得た。
彼は登校拒否に陥っていた間も、学校を恐れていたわけではなかったばかりか、むしろ学校を楽しい場所であると思い、学校へ行きたいとさえ思っていた。思いを妨げていたのは変身の能力の中毒性に対する恐怖心にあった。ところが、恐怖心を克服できたのは、学校生活の楽しさを思い出し得たからだった。要するに、学校生活の楽しさに関する記憶の量の増加によって問題を解決できたということだ。
楽しい思い出の増量化に効力があったのは、如月弦太朗という新たな友人の出現でもなければ山本麻里という恋人の存続でもなく、当時の様子を捉えた写真の数々に他ならなかった。如月弦太朗は「ダチは青春の特効薬だ」と云い「恋人が欲しい」と云うし、確かに一見そのような調子で話が進んだかのようでもあるが、実は物語の肝心な部分がそれを裏切っていたとさえ云えなくもない。先週の第十三話から今週の第十四話にかけての話が何となく解りにくい所以がそこにある。