新番組=ハングリー!第一話と就職難の問題

今宵からの新番組。
関西テレビ放送ホリプロ制作ドラマ「ハングリー!」。第一話。
三十歳になる四ヶ月前に、ロック音楽家として生きたいという夢を諦めて、一流の料理人だった亡き母(片平なぎさ)のフランス料理店を継承することを決意した山手英介(向井理)が、新たな店を開く当日、店内の一寸した事故で野菜を全て台無しにしてしまい、上質の野菜を求めて方々を歩き回っていた際、幸い、素晴らしい野菜の数々が実る見事な農場を見付け、そこのトマトを思わず無断で食べてしまった瞬間、その様子を見詰める一人の少年の存在に気付いた。少年の名は大楠佐助(佐藤勝利)。有機農業を営んでいるその農場「大楠農園」の主人、大楠義明(橋本じゅん)の長男。
山手英介と目が合った大楠佐助は、満面の爽やかなアイドル笑顔を見せながら「父ちゃん、野菜泥棒がいるよ!」と云って父を呼んだ。呼ばれて飛んできた父の大楠義明は鍬を武器にして野菜泥棒に立ち向かおうとした。このとき父の脇に立っていた大楠佐助も険しい表情に変わったところに注目しておこう。あの笑顔は、野菜泥棒を油断させるためのものだったのだ。
しかるに野菜泥棒の山手英介が「これ、もらって良いですか?」と申し出たときには、再び爽やかな笑顔で即座に「いいよ!」と返答した。これに対して父の大楠義明が幼い子に接するような優しい口調で「駄目だろ?佐助。駄目!そういうのは駄目だろ?」と諭したのは、どうやらその野菜泥棒が無償で食べて帰ろうとしていると勘違いしたからだったようだ。確かに山手英介は何も事情を説明していなかった。だから大楠義明から拒否されたあと漸く彼も、自身の料理店のための食材として買い取りたい旨を説明したのだ。
ということは、大楠佐助は農園の野菜を何個か無償で譲ってしまおうとしていたのだろうか。ともあれ、父子の関係が愛に満ちた感じで演じられて、なかなか面白かった。今後は、長女の大楠千絵(瀧本美織)も含めた家族の様子も見ることができるのだろうか。
住吉賢太(塚本高史)が三十歳を機に人生を見詰め直す必要があると述べていたのは、この役を演じる塚本高史が無茶な若者を演じる名手だったことを思うと、時間の流れを感じさせて感慨深いものがあるかもしれない。
もっとも、三十歳を過ぎてアルバイト生活を続けてゆくのは悲しい…というような台詞は、現今のデフレ不況と労働グローバル化の中で、若者が定職を得ることが殆ど不可能に近くなっている経済情勢を踏まえるなら、余りにも無知で無神経な台詞であると批判されざるを得ない。
山手英介の前に立ちはだかる強力なライヴァル店の経営者、麻生時男(稲垣吾郎)は物凄く嫌味な奴であるにもかかわらず、今一つ悪い奴ではなさそうな、むしろ頼りなさそうな雰囲気を漂わせていて、その意味で安心して見ることのできる悪役。彼の部下である柏木一平(石黒英雄)も安心して見ることのできる悪役。平塚拓(三浦翔平)がどのように挫折したのかの経緯は次回にも語られるのだろう。若者たちの中に一人混じってしまった海老名睦子(片桐はいり)は、このドラマにおけるもう一つの見所。
なお、Sexy Zone佐藤勝利が演じる大楠佐助の今回の出番は、番組の開始から約四十六分間ばかり経過した頃に来た。