ハングリー!第四話

遠くから眺めているだけの者にも幸福感を与える人は、間近に接するときにはさらに大きな幸福感を与えてくれる。
ところで。
関西テレビ放送ホリプロ制作ドラマ「ハングリー!」。第四話。
山手英介(向井理)は自身の始めた仏蘭西料理店の経営を少しでも楽にするため、野菜の仕入れ先である「大楠農園」の仕事を平塚拓(三浦翔平)に手伝わせることにした。どうやら農園主の大楠義明(橋本じゅん)との交渉の末、農作業や配達を手伝う代わりに、野菜の値段を少しでも安くしてもらう契約を結んだらしいのだ。
早速、平塚拓は農作業に従事し始めたが、なかなかの重労働で、苦戦を強いられていた。何も事情を知らないまま、その様子を見て驚いていた農園主の長女の大楠千絵(瀧本美織)に、弟の大楠佐助(佐藤勝利)は事情を説明した。「なんか、これから農作業とか配達とか、手伝ってくれるんだって。その代わりに、野菜を安く仕入れるんだって」。
そのとき平塚拓は両名の姿に気付き、陽気に声をかけたが、それに続けて語り出した話題は、農作業に従事しなければならなくなった自身の境遇への不満だった。両名に、「君等もよくやるね」とまで云い放ったのだ。今までロックバンドのヴォーカリストとして、あるいはホストクラブの人気ホストとして華麗に生きてきた彼は、地道な農作業に喜びを見出すことなんか不可能であるとしか思っていなかったわけだが、農業を愛する大楠千絵には我慢ならない愚痴でしかない。大楠佐助も当然そのことを察して、いかにも不安な表情で姉を見詰めていたところ、案の定、大楠千絵は平塚拓に対して激しく怒り、反論を述べて去った。
圧倒されて呆然としていた平塚拓に、大楠佐助は笑顔で近寄り、その眼の高さと同じ位の位置にある平塚拓の肩に手をかけて、「ウチの姉ちゃんさあ、筋金入りの農業少女なんだよね」と語りかけた。
こうして怒鳴られたことで平塚拓も少しは考えを改めたらしい。あるいはむしろ大楠千絵に心惹かれたのが労働への動機になったのだろうか。翌日以降も農業の手伝いに精出していた。収穫した大根の束を入れた籠を彼が苦しみながら運んでいたとき、大楠千絵は収穫した大根に、子供に接するように語りかけていたが、その脇では大楠佐助が大根を畑から引き抜きながら「農業は戦だよ」と呟いていた。
というわけで今回の大楠佐助の出番は番組の前半の、十時六分頃と二十二分頃の二度あった。