ハングリー!第十一話=最終回

関西テレビ放送ホリプロ制作ドラマ「ハングリー!」。第十一話=最終回。
平塚拓(三浦翔平)は大楠千絵(瀧本美織)に片想いをしていて、大楠千絵は山手英介(向井理)に片想いをしている。そして山手英介は橘まりあ(国仲涼子)と別れていないのみか、むしろ橘まりあ側からの歩み寄りを得て関係を深めているようにさえ見受けるが、同時に、大楠千絵に対する好意も深まりつつある。この物語の当初にあった四者間の関係がこのような格好で、何一つ壊れることなく持続したまま、今宵、最終回の結末に達した。かくも中途半端な結末は稀だろう。
また、山手英介は麻生時男(稲垣吾郎)に感謝しつつも喧嘩を売った。これに対しては麻生時男も一応は怒ってみせて、山手英介に決別を告げ、かつて山手家から召し上げた古い店の名も叩き返した。しかるに山手英介は自身の店を再興するにあたり、返してもらった店の名を掲げるのではなく、しかし今まで掲げてきた「ハラペコキッチン」の号を名乗り続けるのでもなく、新たに「ハングリー」と号することにした。なぜだろうか。どう考えても「ハラペコキッチン」の方が良い号ではないか。
このように、不条理なことの色々多い最終話ではあったが、そもそも佐藤勝利の雄姿を見るための番組でしかないわけだから、その辺はどうでもよい。
今宵の大楠佐助(佐藤勝利)の出番は多かった。
先ずは(1)番組開始から二十五分程が経過した辺。大楠農園に近所の小さな子供たちが団体で見学に来ていて、彼の父である農園主の大楠義明(橋本じゅん)がその集団を案内している様子を見た彼は「俺より小っちゃい子が一杯いる!」と喜んだ。
次いで(2)、番組開始から二十九分程が経過した辺。姉の大楠千絵に連れられて平塚拓のロックバンドのライヴ会場へ来た彼は、場内の混雑を見て「うわ!おまつりみたい!」と驚いた。そして通路で他の客と立話をしていた姉に、「姉ちゃん!早く入ろうよ!」と促していた。
次は(3)、番組開始から四十二分程が経過した辺。いよいよライヴが始まり、普段とは一味違うロッカー平塚拓が舞台上に登場したとき、大楠佐助は「拓さん!」と声をかけた。平塚拓を憧れの眼で見詰める彼の脇には、腕組みをした大楠義明。どうやら大楠千絵の代理として連れて来られたらしい。
しかるに、このときは平塚拓を睨んでいた大楠義明も、実際に舞台上の平塚拓の雄姿を見て惚れ込んでしまったようだ。(4)番組開始から五十四分程が経過した辺に来た場面では大楠父子は二人揃って大楠農園で畑仕事をしながら平塚拓の真似をして楽しんでいた。そこへ来た平塚拓に、大楠佐助は「超かっこよかった」と感激の語を捧げた。
しかるに、ここで平塚拓は再び大楠千絵に突然キスをした。大楠佐助がこれを見るのは二度目だが、父の大楠義明にとっては初めての目撃。愛娘に手を出されたのだから怒らないはずがない。先程まで平塚拓に惚れ込んでいたのが一転、鍬を武器にして平塚拓を追いかけ始めた。(5)一部始終を眺めていた大楠佐助は、いつものように暢気な調子で「拓さんて、ほんとロッカーだな」と呟いた。
大楠佐助を中心に見てゆくと、このドラマはどう見ても平塚拓と大楠千絵の物語で、山手英介は所詮は平塚拓の恋敵でしかないように見えてくる。