仮面ライダーフォーゼ第三十四話

仮面ライダー生誕40周年記念作品「仮面ライダーフォーゼ」。
第三十四話「天・穴・攻・防」。
京都旅情編の後編。五山の送火の所謂大文字焼の語を耳にするや大文字隼(冨森ジャスティン)を連想した如月弦太朗(福士蒼汰)。しかし大文字という語に抱いた強烈な印象がその直後、姿を現した天秤座ゾディアーツ=速水公平(天野浩成)との戦闘における大文字バリア、大文字斬の連続攻撃へ繋がったろう。
速水公平は今回の話の事実上の主人公だったと云うも過言ではない。なにしろ唐獅子ゾディアーツ=立神吼(横山一敏)からは頼りにならない老害であると馬鹿にされ、それに怒って喧嘩してみれば瞬時に倒されて、まるで家来のように扱われ、成果を出そうとして焦ったところで如月弦太朗からは変身していない人間体のまま素手で立ち向かわれ、その後ようやく変身してフォーゼになった彼からは大文字攻撃を食らわされ、危うくダークネビュラへ飛ばされそうになり、それでも頑張って踏みとどまってみれば今度は天ノ川学園高等学校理事長の我望光明(鶴見辰吾)によってダークネビュラへ送られそうになり、土下座をして謝罪しなければならなかったのだ。
かつて「仮面ライダー剣」において橘朔也(天野浩成)が「俺は全てを失った。信じるべき正義も、組織も、愛する者も、何もかも」と絶叫したのを、なぜか想起した。
処刑人ヴァルゴ(声:田中理恵)によってダークネビュラへ飛ばされそうになる直前に、漸く待望の「超新星」の境地に到達し、獲得した「ラプラスの瞳」によって理事長が射手座ゾディアーツであり得ることを予言し得た褒美として、辛うじて処刑を延期してもらえた速水公平。これは幸運だったのか、不幸中の幸でしかなかったのか、それとも新たな不幸の始まりであるのか。取り敢えず来週の彼が謙虚に生き始めるのか、それとも従来と違わず無根拠な傲慢を続けるのかを楽しみにしておこう。
他方、先週の話で最も面白く盛り上がったのは如月弦太朗への愛の強さをめぐる朔田流星(吉沢亮)と優希奈(秋月三佳)との抗争にあったが、これが今回は不発。強いて云えば、朔田流星が京都の旅館の宿泊室から東京の(否、正しくは月面の)仮面ライダー部「ラビットハッチ」へ向けてテレヴィ電話で優希奈の淫欲の手強さ、恐ろしさを必死に訴えたものの、JK=ジェイク(土屋シオン)からも野座間友子(志保)からも風城美羽(坂田梨香子)からも大文字隼からも殆ど本気では相手にしてもらえていなかったのが面白かった。
歌星賢吾(高橋龍輝)は知恩院の庭において、亡き父の歌星緑郎(風間トオル)を死なせたのが我望光明に他ならないことを我望光明自身から聞かされた。この事実を彼はどのように受け止めようとしているのか。次週以降の話においてそれが描かれてゆくのだろうか。