仮面ライダーフォーゼ第三十五話

仮面ライダー生誕40周年記念作品「仮面ライダーフォーゼ」。
第三十五話「怪・人・放・送」。
天ノ川学園高等学校の生徒たちの大半が愛聴しているらしい謎のラジオ番組「ジーンのミルキーナイト・カーニヴァル」はインターネット上のラジオ番組である模様。ニコニコ生放送みたいなものだろうか。
如月弦太朗(福士蒼汰)も野座間友子(志保)も普通にこれを愛聴していたという事実には驚かされた。率直に云って違和感があった。
このラジオ番組のDJをつとめて、多くの女子を熱狂させている謎の人物「ジーン」の正体はもちろんJK=ジェイク(土屋シオン)。「仮面ライダーフォーゼ」をこれまで視聴してきた者であれば誰もが最初から気付いたはずだが、なぜか劇中の人々は誰も気付いていなかった。
ジェイクが今週と次週の話において核をなさざるを得ない原因は、新たに出現したギター奏者の山羊座ゾディアーツの正体が、ジェイクと一緒にロック音楽の道を志していた時期もある旧友「ゴット」こと五藤東次郎(川村亮介)であるから。天秤座ゾディアーツ=速水公平(天野浩成)が先週の話で獲得した悪魔の能力「ラプラスの瞳」によって、街中で見た彼に山羊座ゾディアーツの素質があるのを見抜いて、わざわざ天ノ川学園高等学校へ転入させたらしい。
ゾディアーツの力を得て音楽にも魔力を得た五藤東次郎が、あらためてジェイクと手を組み、ラジオを通じて両名の音楽を広め、その魔力で人々を狂わせた結果、事件が表面化した。事件の当事者であるジーンの正体をジェイクと見破った如月弦太朗はジェイクに、ゾディアーツと手を組んだ理由を問い質したが、ジェイクは高等学校三年間だけの儚い友情よりも将来の夢、音楽で生きたいという志望の方が大事であると述べて「仮面ライダー部」脱退を宣言した。
仲間を一人失ったことによるフォーゼの戦闘力の欠損が今週と次週の話の主題であるのは間違いなく、ジェイクを敵へ寝返らせたのがそのための設定であるのも見易い。しかし一時期の友情よりも長期間の志望の方が大事であるという考え方は決して間違いではなく、確かに一つの人生観ではあるはずだ。間違っているのは、自己を偽装して世を欺いてでも名を売って世に出て成功者になろうとする人生設計に他ならない。実のところ、そういう連中は多い。容姿を整形する奴や有力者に媚びる奴はその典型だ。世に出る程の実力もなく世に出ることに空しさを感じない神経を理解するのは難しいが、どういうわけか、そうした売名者が後を絶たない。甚だ困ったことに、この物語はジェイクをそのような無益な売名者として描いてしまったのだ。
この番組の制作者は、そのことの問題の深刻性をどう考えているのだろうか。それとも放送や芸能の業界では当たり前になっていて、そのことの異常性に気付いてもいないのだろうか。