仮面ライダーフォーゼ第四十四話

仮面ライダー生誕40周年記念作品「仮面ライダーフォーゼ」。
第四十四話「星・運・儀・式」。
勧善懲悪を基底に置く物語は、対象の年齢を問わず、何程か残酷な要素も要するのだろうとは了解できる。なぜなら悪役の邪悪な行為に対する観者の怒りを惹起してこそ懲悪への欲求が成立するからだ。問われるべきは、その表現の、物語の世界への適合性の程だろう。
いかんせん今朝の話には爽やかさがなく後味が悪かった。なにしろ友情を最も大事にしているはずの主人公が幼馴染の友を殺しかけてしまったのだからだ。
前回の話で、双子座ゾディアーツへの変身を強いられた城島ユウキ(清水富美加)は、その瞬間、「光」と「闇」の二つの人格への分裂をも強いられていた。本来の、「本物」の城島ユウキは「光」の側であり、「闇」の城島ユウキは「偽物」でしかなかったが、ゾディアーツの力を持っていた「闇」の城島ユウキは次第に存在の度合を強化して「本物」の立場を乗っ取り始め、他方、「光」の城島ユウキは身体も記憶も奪い取られつつあった。
そして今回、「闇」の城島ユウキの陰謀によって、フォーゼ=如月弦太朗(福士蒼汰)と仮面ライダー部の仲間たちは、あろうことか「光」の城島ユウキを、「偽物」と間違えて攻撃し、退治しようとしていたのだ。いよいよ止めを刺そうとした瞬間、「闇」の城島ユウキが姿を現してその瞬間を目撃しようとしたのを見た歌星賢吾(高橋龍輝)がその挙動の少々不審であるところに気付き、「本物」になり済ましたその強気な城島ユウキこそが「偽物」であり、「偽物」として退治されようとしていた弱々しい城島ユウキは意外にも「本物」であることを見破った。結果、「本物」は殺害されずに済んだのだ。
結局、如月弦太朗は幼時に城島ユウキと交わした約束を思い出し、思い出の品をも見付け出し得て、ホロスコープスの「星に願いを」の儀式において生贄にされて消されようとしていた「本物」の城島ユウキの眼前にそれを見せたことで、二人の間の、幼時からの長年の、性別を超えた友情を取り戻してその「本物」をまさしく「本物」として完全に蘇らせることに成功した。同時に、厚かましくも新たな「本物」の地位を僭称していた「偽物」を本来の「偽物」の立場へ引き摺り下ろすことにも成功した。不当にも逆転しようとしていた「光」と「闇」の関係が再び逆転して正常化した。
結論としては正義の勝利であり友情の勝利であるとは云える。だが、その過程において、友情こそが何よりも大事であり友情によって全てを解決できると信じている如月弦太朗が、幼馴染の城島ユウキを友情の名の下に退治して抹殺しようとしていた事実も残る。メテオ=朔田流星(吉沢亮)が友情のために故意にフォーゼ=如月弦太朗に致命傷を与えて殺害した(しかも、殺害しかけたのではなく、殺害しようとしたのでもなく、本当に殺害した)のは第三十二話における事件で、その直後、どういう魔法によるものか奇跡の復活を遂げたとはいえ、一時は本当に亡くなっていたわけで、いくら何でも無茶な展開だった。この番組の制作者が後味の悪い要素を話の核に据えたがるのは何故か?という疑問を、今朝の話は改めて突き付けた。
もっとも、朔田流星はそれ以来、まるで別人になったかのように如月弦太朗を大切に思うようになり、自身を犠牲にしてでも如月弦太朗を守りたいと願うようにもなってその意を行動で表していて、今回も、「闇」の城島ユウキによって殺されかけた如月弦太朗を守るため身を挺した。
朔田流星を愛するのは野座間友子(志保)だが、朔田流星は野座間友子の愛を喜んでいない様子。