仮面ライダーフォーゼ第四十六話

仮面ライダー生誕40周年記念作品「仮面ライダーフォーゼ」。
第四十六話「孤・高・射・手」。
天秤座ゾディアーツ=速水公平(天野浩成)は、ゾディアーツ集団「ホロスコープス」の頭領、射手座ゾディアーツ=我望光明(鶴見辰吾)を裏切ってはいなかった。換言すれば、フォーゼ=如月弦太朗(福士蒼汰)やメテオ=朔田流星(吉沢亮)や歌星賢吾(高橋龍輝)をはじめ、「仮面ライダー部」一同からの信頼を得た上で、それを裏切ったということでもある。
それなのに、彼は結局、「ダークネビュラ」へ放り投げられて消えてしまった。これは二重の意味で皮肉な展開だった。
第一に、もともと彼はヴァルゴ(声:田中理恵)によってダークネビュラへ送られるのを恐れ、拒み、逃れて奮闘していたのに、結局はダークネビュラへ飛ばされた。ヴァルゴが呼び出していたような偽物のダークネビュラではなく、本物のダークネビュラへ。偽物であれば何の危険もなかったと思しいが、本物では助かりそうもない。しかも本物を呼び出したのは選りにも選って彼の心酔する我望光明に他ならなかった。嫌な奴に葬られるのを逃れた挙句、崇拝する人に葬られたようなもので、救いがない。
第二に、彼は心酔する我望光明から軽く見られているのを悲しみ、少なくとも最期には重く見られる存在でありたいと願って、無防備な状態にあった我望光明を守るため決死の覚悟で身を挺してみせた。そうして我望光明は救われ、彼はダークネビュラへ投げ飛ばされてしまったが、それでも彼は重くは見てもらえなかった。何のために身を挺したのか。
最初から裏切る意のなかった速水公平とは正反対の位置にあるのがヴァルゴ=タチバナ=江本州輝(山崎一)だった。なにしろ彼は、ダークネビュラを呼び出してどこかへ移動しようとしているときの射手座ゾディアーツ=我望光明が攻撃にも防御にも完全に無能な状態に陥ることを密かに把握した上で、そのような千載一遇の状態を出来するだけのために、ホロスコープスの計画に協力し続けていたからだ。
ここで気になるのは唐獅子ゾディアーツ=立神吼(横山一敏)の心境だろう。我望光明に対する彼の忠誠心は、速水公平の忠誠心とは比較にならない程に堅固だが、どうしてそこまで心酔し切ることができるのだろうか。ライヴァル速水公平の惨めな結末を目の当たりにして、それでもなお「我望様」のための忠実な「側近」であり続けるに足る意味を、一体どこに見出しているのだろうか。己だけは特別であるはずだと信じているのだろうか。速水公平は我望光明の「駒」でしかなかったが、立神吼は駒の地位にさえも達していないのではないのか?と心配せざるを得ない。