仮面ライダーウィザード第七話

話のまとまり具合の上手さに感心してしまった。同時に、登場人物の全員が生動して愛嬌を発揮していて面白かった。テレヴィを見ていて、こんなにも無理なく楽しめることは稀ではないだろうか。特に、警視庁鳥居坂警察署長(小宮孝泰)の一人芝居の面白さには驚嘆した。操真晴人(白石隼也)の、寡黙で温厚で悟ったような様子であるのに妙に軽そうでもある感じも意外に良い。
魔性の女で、詐欺師でもある川崎愛美(松本若菜)は、失われた家の記憶を取り戻そうとしていた。
幼時の川崎愛美は、両親との三人家族で、立派な邸宅で幸福に過ごしていた。しかるに父が詐欺に遭って財産を奪われ、邸宅をも手放した。幸福な家族生活の記憶の場だった邸宅を何とか取り戻そうとして必死に働いていた父は過労によって早く亡くなり、母も後を追うように亡くなった。そうして一人になった川崎愛美は、それ以来、現在に至るまで、失われた家族の幸福の思い出の拠点であるその邸宅をいつかは買い戻したいと願望してきたが、最近、新たにその邸宅を買い取ろうとしている人物は土地にだけ目を着けたのか建物を取り壊して建て替えてしまおうとしているという事実を偶然にも知った。そうなる前に、何としてでも一刻も早く買い戻さなければならない!と決意した結果、いつしか詐欺をも働くようになっていた。
事態の解決は二段階にわたった。まずは川崎愛美が、たとえ邸宅を失おうとも記憶を抱き、過去のために現在を犠牲にするのではなく現在を大切にする道を選んだ。次いで、所謂「白馬の騎士」とでも云うべきか、詐欺の被害者の一人だった若い資産家、山形耕一(高橋良輔)が愛する川崎愛美を再出発へ向けて激励するため、その邸宅を直ぐに買い取り、川崎愛美がそれを買い戻し得るようになるまで待ち続けることを約したのだ。
後者が事実上の愛の告白であるのは見易い。もともと山形耕一は川崎愛美の魔性の美に惚れ込んで、ゆえに詐欺に遭ってそれを詐欺と認識できていたにもかかわらず咎めようとはしなかったが、今回、ファントムの襲撃を受けた際の川崎愛美の咄嗟の行動から、この詐欺師が決して真の悪人ではなく、本来は愛に満ちた人物であるに相違ないと考え、あらためて愛を感じていた。そして信じようとしていた。
他方、前者は操真晴人からの激励によって動かされた結果だが、「あんたの希望は、俺が守る」という彼の言が説得力を持ち得たのは、彼が普段の飄々とした言動に反して人間の希望と絶望に関する極めて鋭い洞察力を具えていて、しかも驚異の戦闘力で人間を危険から救出し得るところをも見せたからであり、延いては、「指輪の魔法使い」ことウィザードに変身してファントムに対峙し、巧みに武器を選択して見事に退治してみせたからであると認められる。戦闘の場面と心の話は、辛うじて緩く結ばれているのではなく、一つの話をなしていると認められる。