仮面ライダーウィザード第十二話

平成「仮面ライダー」第十四作「仮面ライダーウィザード」。
第十二話「希望の和菓子」。
緑色の魔宝石で造られた緑色の魔法の指輪で、操真晴人(白石隼也)は新しく緑色のウィザードに変身した。ウィザードの姿形は鮮やかな色を得ると格好よくなるようであると見受ける。
今回のファントム、ヴァルキリーの標的は和菓子屋の松木庵。
事件発生の直前、操真晴人は何時ものドーナツ店の前で、饅頭よりもドーナツを食べたがる少女を目撃していた。彼と一緒にそれを見ていたドーナツ店主は、松木庵の饅頭は美味ではあるものの若い子には喜ばれないかもしれないと発言した。
しかし考えるに、小豆を用いて餡を造るのであるから饅頭こそ味覚のみならず栄養の上でもバランスに恵まれていて、美容と健康にこだわる類の女子には喜ばれて然るべきではないのだろうか。ドーナツばかり摂っていたら太るだけだろう。
ともかくも、戦後の学校給食の影響によるものとでも云うべきか、現代米合衆国流の醜い食文化に侵されているようでは健全な味覚が育つはずもなく、饅頭のような美味なものが売れるはずもないので、松木庵の経営状態は苦しかった。
そこへ目を着けたのがヴァルキリーのファントム。先ずは高級料亭への何十個もの和菓子の搬入を妨害することで、大量の和菓子を全て台無しにして大損害を与えたのみならず、松木庵とその料亭との間で継続していた取引を解消させ、経営状態をさらに不安にして、次いで百貨店の和菓子担当者になり済まして毎日五百個の饅頭を買い取りたいと申し出て、五百個もの饅頭を搬入させたところで嘘の話だったことを明かして絶望させようとした。
いかに大百貨店といえども毎日五百個もの饅頭を売り切るのは無理な話ではないかと思われるので、そもそも疑って然るべき話だったに相違ないが、庵主が敢えてそれを受け容れたのは、弟子の稲垣徹也(石田卓也)が熱心に説得してくるのを受け止めたいと思ったからだったろうか。
それにしても、この頑固者の和菓子店、松木庵の直面する困難は、ファントム退治のみによっては解決しようもない。あのドーナツ店主が認めたように、饅頭の味は素晴らしいのに、大して売れていない。小豆等の材料を仕入れなければならないが、代金の支払いには滞っている。そうした中でファントムの企みによって、店の売上の半分を占めていた高級料亭との取引は解消された上に損害の賠償までも引き受け、さらに五百個もの饅頭をも無駄にされた。商売の面でも再起不能に陥る程の打撃だろうが、心を込めて拵えた自慢の饅頭が誰をも喜ばせることもないまま無駄になってしまったことの心への打撃はもっと大きいだろう。もちろんファントム退治によって心は修復され得るが、それでも、経営が好転するわけではない。料亭が松木庵の饅頭を懐かしんで許して取引を再開しても、それだけでは足りないはずだ。