旅行記二/東京国立博物館
旅行記二。出張記二。
朝八時半頃、ホテルの一階の食堂で朝食。和洋食を揃えて、悪くはなかった。荷物をまとめて九時半頃にホテルを退出。不忍池を眺めながら歩き、上野駅へ入って大型コインロッカーへ荷物を預けたあと駅を出て、上野恩賜公園へ。世間は三連休の初日を迎えたところであるから流石に朝から賑わっていた。その中を抜けて十時頃に東京国立博物館へ入った。
先ずは平成館で今日から始まった特別展覧会「和様の書」を約二時間で急ぎ足に観照した。かつて中学生だった頃には、高野切の中では第三種の明晰な書風にばかり心惹かれたが、今は第一種にも魅了される。
平成館の一階には恒例の、鶴屋吉信の出店あり。紡詩・つばらつばら・プリンを購入して休憩し、平成館の一階の企画展示室も見たあと、本館へ移動。国宝室をはじめ各室の展示でも「和様の書」に関連した展示が多かった。国宝室には法華経一本経(慈光経)。宮廷美術室には有名な鳥獣人物戯画断簡。駿牛図巻断簡、馬医草紙絵巻&断簡の牛や馬も美しかった。水墨画室の祖師図二幅は旧大仙院方丈障壁画で、伝狩野元信筆。秀峰筆の山水図屏風六曲一双の波打つような筆の運動は、一見して雪村を想起させたが、なるほど解説文にもその旨が記されてあった。屏風室には土佐派の源氏物語図屏風が二つ、女房三十六歌仙図屏風が一つ。書画展開室にも土佐派と住吉派の絵が多く並び、俵屋宗達や岡田為恭の大和絵も交え、「和様の書」に連動した内容だったが、注目に値するのは、松山藩の絵師、松本山雪の牧馬図屏風六曲一隻が出ていたこと。絵は大和絵ではないが、空間を埋め尽くすように詩文や歌が揮毫されているところが「和様の書」に連動している。久し振りに見ることを得たが、これを見るのが今日の第一の目的だった。
近代美術室には川合玉堂の家鴨のほか、望月玉泉の保津川探淵遊鱗、熊谷直彦の雨中山水、速水御舟の紙漉場。
三時頃に東京国立博物館を出て、国立西洋美術館へ行き、所蔵品を観照した。本日は無料開館日で、大賑わいだった。ロダンの彫刻の前のベンチで盛大に居眠りしている老人がいて、ついにはベンチに横になって寝ようとしていたので看視員の男子から起こされて注意を受けていた。
四時半頃に国立西洋美術館を出て、日本芸術院会館へ行き、昨年度の受賞者に関する展示を見学。
東京文化会館の前に大勢の人あり、何事かと見れば、どうやら英国ロイヤル・バレエ団の男子バレエの著名な人が公演を終えて挨拶に出てきていた模様。その姿を何枚か撮影させてもらった。人ごみを抜けて出て行った若い日本人男子も美しかったが、誰からも騒がれなかったあの人もバレエの踊り手ではなかったのだろうか。
夕方五時頃に上野駅を発し、浜松町で乗り換えて羽田空港へ。空港の搭乗待合室で遅めの昼食を兼ねた早めの夕食。夜八時二十分頃、松山空港へ到着。バスで道後温泉まで戻った。食料品店で買物をして、帰宅したのは十時頃。