スターマン第三話

ドラマ「スターマン -この星の恋」。第三話。
先週までの長閑な話からは一転、今宵の話で一気に急展開が来た。
先ずは(1)、富士山の麓の、広くて小さな町の、祖母と母と三兄弟の三世代が同居している宇野家に新たな若い「パパ」として迎え入れられ、長閑に生活し始めていた記憶喪失の謎の美男子、星男(福士蒼汰)の過去の真相を知るらしい羽生ミチル(木南晴夏)が、朝食中の宇野家に土足で上がり込んで、星男を殴り、怒鳴り、連れて帰ろうとした。流石の宇野佐和子(広末涼子)も諦め、今まで星男に語り聞かせてきた己の話が全て作り話だったことを星男に告白し、羽生ミチルに引き渡した。ところが、いかにも恐ろしげに見えた羽生ミチルは意外に心ある人だったらしい。星男が本当に過去の記憶を喪失しているらしいこと、しかも宇野家における星男が幸せに見えたことを認めた羽生ミチルは、星男を解放してしまった。星男は、己が本当は星男という名の人物ではないことを認識した上で、それでもなお改めて星男として生きてゆくことを選んだ。
このことの意味は大きい。なぜなら今までの宇野佐和子は嘘をついて星男を騙していた状態だったが、ここに至り、星男は引き続き騙されることを自ら望んだ格好になったからだ。宇野佐和子は、嘘をつき続ける苦痛からは解放されたにもかかわらず、同時に、嘘をつくことによって強引に獲得しようとした幸福を、嘘をつかなくとも、逃すことなく維持できるのだ。親友の須田節(小池栄子)と語り合った通り、夢のような展開としか云いようがない。都合の好過ぎる展開であるとも云える。
しかるに(2)この夢のような展開を邪魔するかのように、宇野佐和子の元夫、宇野光一(安田顕)が戻ってきた。そもそも彼はどのようなわけで妻と子供三人と義母を捨てて失踪したのか、どのようなわけで戻る気になったのか。謎は次週にも説き明かされるのかもしれない。また、彼は早くも星男の超能力を目撃したが、そのことの影響も何かあるのだろうか。
以上二つの大激動の間にも色々な出来事があった。
宇野家の三兄弟の内、三男の宇野俊(五十嵐陽向)は星男を初めて見たときから親しみを感じ、新たな「パパ」として愛していた。それどころか、星男の正体を「宇宙人」と見て、その超能力にも感銘を受けていた。次男の宇野秀(黒田博之)も本当は弟と同じく早くから星男に心惹かれていたものの、兄に脅されて遠慮して星男に余り懐こうとはしていなかったが、傷付いた鳥を瞬時に治癒して空へ帰した星男の超能力を目撃して以降は、もはや星男への愛を隠そうとはしていなかった。彼等二人とは異なるのが長男の宇野大(大西流星)で、彼は星男を「パパ」とは認めようとはしていなかったが、星男が羽生ミチルに連れ去られそうになったときには不安な顔をしていたし、星男が連れ去られてしまった(と思われていた)夜には、ついに、星男がいなくなって寂しいこと、星男には家にいて欲しいと思っていたことを告白した。そこへ星男が戻ってきたのだ。
これまで常に不審な挙動を見せてきた重田信三(國村隼)は、今回ついに、星男に抱き着き、抱き締め、何かを感じ取って幸福な表情を浮かべていた。それを目撃した宇野佐和子は星男が実は「ノーマル」ではないのではないかと一瞬は疑いかけたが、重田信三は即座に両名ともに「普通の人間」であると強調して、その疑念を打ち消した。だが、宇野佐和子の云う「ノーマル」と重田信三の云う「普通の人間」は多分、全く異なる意味を表している。そして重田信三が「普通の人間」であると強調したことは、むしろ彼と星男が「普通の人間」ではないことを物語る。
重田信三に抱き締められた星男が恍惚の表情をさえも浮かべていたのは、面白さを狙っただけの、特に意味のない演出であるのか、それとも何か重大な意味を秘しているのか。
佐竹幸平(KENCHI)が星男を相手に林業について大いに語っていたところも一寸面白かったが、何よりも凄かったのは、物語の舞台となっている町には鹿の群が出没するらしいという事実。