スターマン第五話

ドラマ「スターマン -この星の恋」。第五話。
富士山の麓の、広くて小さな町の、山の中の洒落た一軒家の、祖母と母と三兄弟の三世代が同居している宇野家に、新たな若い「パパ」として迎えられた記憶喪失の謎の美男子、星男(福士蒼汰)が、喪失していた記憶を取り戻して別人と化した。
そもそも星男の前身である達也(福士蒼汰)は、天涯孤独の男子で、東京の大都会で、悪い奴等に取り囲まれて、怖い人として生きていたようだが、そのような生活を彼自身が逃れたかったのか、東京から遠く逃亡して、富士山の麓の町へ赴いて、その夜、湖上の小舟に横たわって多量の薬物を一気に飲んで自ら生命を絶とうとしたところ、天上から光が降りてきて彼の身体に宿って再生させた。やがて星男と呼ばれる新たな人物が誕生した瞬間だった。
宇野家の三兄弟の長男の宇野大(大西流星)と次男の宇野秀(黒田博之)は、復活した達也を「黒星男」と呼び、前日までの星男を「白星男」と呼んで対比した。
先週の第四話までの話は、白星男としての星男と一緒に生きてゆくしかないところにまで宇野佐和子(広末涼子)を追い詰めることに費やされていたが、今週の第五話で判明したのは、黒星男としての達也もまた、宇野家で生きてゆくしかないところにまで既に追い詰められていたということだろう。
今までの人生の全てを捨てるつもりで自殺を図った程の彼には、今や帰るべき場所なんかどこにもないが、反面、今さら改めて自殺を図る度胸はなかった。なぜなら強面の人として生きることを強いられていた彼は、狂暴な言動を身に付けてしまってはいるが、実は小心者だからだ。
そのような彼を、自殺を図るところまで追い詰めた原因は、東京における彼の環境への嫌悪感と恐怖心にあったに相違ないが、今の彼は、星男としての平穏で幸福な家庭生活をも体験してしまったことから、かつて抱いた嫌悪感や恐怖心からは早くも遠ざかりつつあると見受ける。なぜなら達也は、星男として過ごした平穏で幸福な日々の記憶を、夢の中の出来事として微かに記憶しているらしいからだ。夢の中の、夢のような幸福を、実は達也は愛していた。達也が繰り返し述べたように、星男の本体は達也であり、白星男と黒星男は別人のように見えようとも別人ではない。星男が料理を苦手にしていたのは、達也の所為だったのだ。
そのようなわけで達也は達也を捨てて星男として生きることを選んだ。それ以外の選択肢なんかない。達也の記憶を持たない星男ではないから、どうしても怖い言動が出てしまい、白星男ではない黒星男になってしまうが、それでも、星男の役割を果たしてゆくしかないし、彼自身がそれを密かに望んでもいたらしい。
宇野家の三兄弟の三男の宇野俊(五十嵐陽向)は、白星男と黒星男との違いを踏まえた上で、それでも黒星男の中には白星男が生きているはずであると理解し、黒星男に抱き着いて甘えた。これが達也を星男に変えることは容易に想像される。
白星男の正体を最初から「仲間」であると見抜き、黒星男の出現の意味をも解していると思しい重田信三(國村隼)は、黒星男の現状をどう考えるのだろうか。安藤くん(山田裕貴)は盛大に怪我をしたり、臼井祥子(有村架純)の重田信三への恋の場面を目撃したりして災難の連続だが、何か救済はあるのだろうか。