スターマン第六話

ドラマ「スターマン -この星の恋」。第六話。
富士山の麓の、広くて小さな町の、山の中の洒落た一軒家の、祖母と母と三兄弟の三世代が同居している宇野家に、新たな若い「パパ」として迎えられた記憶喪失の謎の美男子、星男(福士蒼汰)は、漸く「宇宙から来た王子様」という存在の仕方へ純化された。
今まではそうではなかった。もともと星男の身体は達也(福士蒼汰)の身体であり、しかるに天涯孤独の身の上から悪の世界に生きてきたらしい達也は、そのような生活に疲れ果て、東京から逃れてきて、富士山の麓の湖に浮かんだ小舟に横たわり、多量の薬物の力を借りて自身の人生を終わらせようとしていた。そこへ天から光が降りてきて彼の身体に宿り、過去を捨てた新たな人物と化して、宇野家に拾われた。星男が誕生した。
星男は達也とは正反対とも云える程に清い男子ではあるが、身体は達也の身体を借りている以上、達也の身体を借りてはいても達也の人生とは決別すること、否、達也の人生は既に終焉したことを、達也の内外に確認しておく必要があった。先ずは達也の外の、達也の過去をよく知る人物として羽生ミチル(木南晴夏)が現れ、達也を東京へ連れ戻そうとしたが、達也の記憶を持ち合わせてはいない星男はそれを拒否し、羽生ミチルもまた、星男が達也と同一とは言い難いことを認め、達也を連れ帰ることを諦めた。しかるに次には達也の身体の内に生き残っていた達也自身が、星男を抑圧して表面に表れ、一旦は、自身が星男のような人物ではないことを明らかにしたが、結局は達也も、達也の暗い人生よりも星男の明るく温かな人生を歩んで行きたいと願望し、達也の人生を捨てて星男として生きてゆくことを選択した。
こうして達也がいなくなって星男へ生まれ変わることは、達也自身を含めた関係者全員の承認を得たに等しい。それで今宵の第六話では、かつて自殺を図った不幸な達也は、星男に身体を乗っ取られていた間の、生の喜びを暫し味わうことができた幸福をかみしめながら、改めて安らかに永眠した。達也は名実ともに終焉し、「宇宙から来た王子様」としての星男が正式に誕生したのだ。
このように考えてみると、凄まじい話ではある。達也の人生は何だったのかを思わずにはいられない。
とはいえ達也は、星男として、「黒星男」として生きていた間、確かに幸福な顔になることはできていた。宇野家の三兄弟に野球を教えながら、長男の宇野大(大西流星)の頼もしさ、次男の宇野秀(黒田博之)の上達を喜び、三男の宇野俊(五十嵐陽向)の愛らしさに和んでいた。
三男の俊に球が直撃しそうになったときには、達也の身体の中の星男が発動して瞬時に駆け寄り、球を受け止めて俊を守り、俊が蟻を踏みつけて重症にして悲しんだときにも、達也の身体の中の星男がそれを再生させ、宇野家の三兄弟は喜んだが、達也は自身の身体に潜んでいる驚異の力に恐怖を抱いていた。このことが達也に自身の再度の死を予感させることに繋がったわけではあるが、同時に、三兄弟に抱き始めた愛情を自覚し、束の間の幸福を味わうことにも繋がったろう。
達也=星男が球を受け止めて俊を守ったときの、再び守られた俊の安心した顔が、あまりにも印象深かった。あのような顔を見ることができたとき、人は幸福を感じることができるのであると思う。
他に面白かったこととして、重田信三(國村隼)の「古女房」(角替和枝)が、夫の正体を完全に知った上で、全く知らないかのように振る舞うことを四十年前に彼と約束して結婚し、以来四十年間、約束を守り続けていたという事実がある。そして今週も、安藤くん(山田裕貴)に幸あることを願わずにはいられない。