新番組=実験刑事トトリ2第一話

今宵からの新番組。
土曜ドラマ「実験刑事トトリ2」。
第一話「罪深き建築家の肖像-実験刑事ふたたび」。
都鳥博士(三上博史)は難事件の謎を鮮やかに読み解く力の持主だが、推理の正しさを証明するために奇妙な実験を重ねるところが挙動不審にも見えて、いかにも天才ならではの変人の趣を漂わせている。しかるに、この変人に振り回されているだけの常人のように見える安永哲平(高橋光臣)も微妙に変な人で、変人同士が互いを尊重し合い、丁寧な言葉で温和に語り合っている辺が最高度に変な感じを生じていて面白い。この二人の俳優を起用し組み合わせた見識と判断に感心する。
今回の犯人、久保美千代を演じた木野花も素晴らしかった。世界の建築界で評価され注目されている才能豊かな建築家であり、最先端の働く女である久保美千代は、実は、どんなに洒落た才女として振る舞おうとも身体の衰えを隠し切れない初老であり、仕事仲間である若い男、内藤隆太(丸山智己)に密かに片想いを抱きながらも想いを明かすことなんかできるはずもない老いた乙女だった。しかもその若い男を部下の若い女に奪われ、仕事までも奪われようとしていた。奪われた男を奪い返すために犯行に及んだわけだが、そうした真相を内藤隆太が理解し得た瞬間、この才女はその理解が誤解であることを告げ、己の意図はあくまでも己の名声のために内藤隆太の才能を利用し尽くすことのみにあったのであると述べた。無論それは真実ではないだろう。この宣告は、久保美千代に対する憐みを内藤隆太に禁じるものであり、同時に、彼の才能を評価してその今後の人生を激励するものでもあると解される。内藤隆太に対して、彼を世界の建築界に華々しく売り出してくれた大恩人を一刻も早く見限って、新たな人生を歩み始めるべきことを、その大恩人は促しているのだ。何という愛の深さだろうか。この複雑な人物を、木野花が明晰に演じていた。