仮面ライダー鎧武(ガイム)第二話

平成「仮面ライダー」第十五作「仮面ライダー鎧武」。
第二話「必殺!パインキック!」。
いくつか重要な事実が明かされた。先週の第一話で葛葉紘汰(佐野岳)は工場の裏に発生していた奇妙な空間へ潜入し、中に広がる密林に果樹として生るロックシードを入手した。どうやらあの密林は、物語の舞台である新興都市「沢芽市」の経済と大衆文化を支配している感のある大企業「ユグドラシル」の果樹園であり、社員たちはそこでロックシードを収穫しているようだが、第一話でも描かれたように、そこにはインベスと呼ばれる怪物が多く棲息しているので、収穫に夢中になっていると襲われる恐れがある。
そこで社員集団の防衛を引き受けるのは仮面ライダー、否、「アーマードライダー」の斬月であり、その正体はメロンのロックシードを持つ呉島貴虎(久保田悠来)。ユグドラシルの幹部であるらしい。
先週の第一話で葛葉紘汰はアーマードライダーに変身するためのベルトである戦極ドライバーを入手したが、それはもともと彼の親友である角居裕也(崎本大海)が、街に暗躍するロックシード密売人のシド(浪岡一喜)から入手したものだった。ユグドラシル幹部である呉島貴虎がアーマードライダーであることを踏まえるなら、戦極ドライバーもロックシードも出所がユグドラシルであるに相違なく、ゆえに「錠前ディーラー」のシドがその手先であるのも見やすい。
そうであれば、沢芽市内で勢力争いを繰り広げる複数のダンス集団の若者たちの間にロックシードを流通させ、ロックシードでインベスを呼び出して闘わせる悪趣味なインベスゲームを流行させたのがユグドラシルだろうことも見やすい。そもそも沢芽市内の若者たちの間に、ダンス集団を結成して他のダンス集団と勢力を競い合うような文化を作り出したのもユグドラシルの計画だろうと想像される。この狂暴な文化を担う若者たちをビートライダーズと名付けているらしい。
そしてビートライダーズの間にアーマードライダーを出現させることもユグドラシルの計画の一だったことは、呉島貴虎の言から窺える。彼は第一号の候補者として角居裕也を想定していたらしい。既にビートライダーズから足を洗って社会人として仕事に精出し、早く「大人」になろうとしている葛葉紘汰については存在さえも知らなかったのかもしれないが、ともかくも、誰であれ、ビートライダーズの世界と決して無縁ではない若者がアーマードライダーの第一号になったという事実だけでも、満足ゆく成果であるというのが呉島貴虎の認識であると見受ける。
換言すれば、アーマードライダーに誰が変身するのか?変身して何をなすのか?ということは、ユグドラシルの計画にとって本質ではないということだろうか。
ダンス集団「鎧武」に敵対するダンス集団「バロン」の雄、駆紋戒斗(小林豊)は戦うことを常に真剣に考えていて、ゆえに敵にとっては怖くて嫌な奴だが、反面、困っている子供を放っては置けない性格の持主でもあるようで、その点では葛葉紘汰に近いし、何よりも卑怯な行為に走ることを恥と心得ていて、配下の者が卑怯な真似をすることを断じて許さない高潔の人でもあるところは注目に値する。言動が一々格調高く威厳に満ちているのは、「バロン」を名乗る所以だろうか。
駆紋戒斗をはじめ「バロン」の人々が強そうな顔立ちをしているのに比して、「鎧武」の人々は強そうには全く見えない。葛葉紘汰に至っては外見も言動も愛嬌があるが、実際には強くて頼りにされているのが今回も描かれた。巨大な蜜柑を回転させて巨大インベスを撃退したり、駆紋戒斗から高級パイナップルのロックシードを至急もらい受けて使いこなしてみせたりした辺に、葛葉紘汰の愛嬌も人望も、それぞれ表れていたように思われる。彼を特に慕っているのは呉島光実(高杉真宙)だが、ユグドラシル幹部でアーマードライダー斬月である呉島貴虎の弟である以上、大きな波乱に見舞われるだろうことは予想できる。