幕末宮廷の料理人

幕末の宮廷で料理人(「板元」)をつとめた福田良峰(よしたか)の極めて興味深い発言を、下橋敬長が伝えている。大いに参考になるので引用。「とかく素人は物を知らぬからどうにもならぬ。大根にしても、蕪はなおさら、どのようなものでも、初め鍋に入れたれば、直に醤油を入れて煮く。それを素人は御存知ない、初めに水で煮て、煮えたところへ醤油を入れる。そんなことをしてはどうにもならぬ。初めに醤油を入れて煮いたら、中まで塩がしみてうまく食べられる。唯黒豆と白豆は、そんなことをしたら、堅うて食べられませぬ、その他は水で煮てから、醤油を入れたのでは味が無うて、食べられませぬ」。