仮面ライダー鎧武第十話

平成「仮面ライダー」第十五作「仮面ライダー鎧武」。
第十話「ライダー大集結!森の謎を暴け!」。
ヘルヘイムの森とは何か?インベスとは何か?そしてダンス集団「鎧武」の仲間だった角居裕也(崎本大海)はどこへ消えたのか?それらの謎を明らかにするため、ヘルヘイムの森で防護服を着て何か作業に従事していた人々に話を聞いてみたいとアーマードライダー鎧武の葛葉紘汰(佐野岳)は考えた。そこでアーマードライダー龍玄の呉島光実(高杉真宙)は、アーマードライダーバロン=駆紋戒斗(小林豊)、アーマードライダー黒影=初瀬亮二(白又敦)、アーマードライダーグリドン=城乃内秀保(松田凌)に声をかけてヘルヘイムの森でロックシード収穫のゲームを開催することを提案した。彼等三人に呉島光実自身を含めた四人でゲームを開催し、ヘルヘイムの森の番人であるらしいアーマードライダー斬月=呉島貴虎(久保田悠来)の注意をそこに惹き付けることができれば、その隙に葛葉紘汰が作業員集団の「拠点」を探し出すこともできるのではないか?という考えだった。
呉島光実には別の思惑もあった。「白いアーマードライダー」の正体が本当に兄の呉島貴虎であるのか、その実力がどの程度であるのかを知りたいと考えていた。
ゲームを実施するための条件として、三人に参加させるだけではなく、ヘルヘイムの森へ行くための乗物であるロックビークルを未だ有していなかった初瀬亮二と城乃内秀保の両名にもロックビークルを持たせなければならなかった。そのための道は一つしかない。錠前ディーラーのシド(浪岡一喜)に交渉しなければならなかった。
これが今回の作戦に対する致命傷になったとしか見えない。なぜならシドはDJサガラ(山口智充)ともプロフェッサー戦極凌馬(青木玄徳)とも繋がっているからだ。
DJサガラによる余計な情報拡散によってアーマードライダーブラーボ=鳳蓮・ピエール・アルフォンゾ(吉田メタル)までもが参戦してきた。シドは喜んでロックビークルを与えたに相違ない。戦闘能力の極めて高いアーマードライダーブラーボの出現に呉島貴虎が強い警戒感を抱いているのをシドは知っているから、呉島貴虎の傲岸な言動に常々不満を抱いているシドは、他の誰よりも鳳蓮・ピエール・アルフォンゾをこそ、呉島貴虎に打つけてみたいと考えたはずだからだ。
クリスマスの日。ゲーム開始の当日。呉島光実、駆紋戒斗、初瀬亮二、城乃内秀保が集結し、ゲームには参戦しない葛葉紘汰が物陰に隠れてその様子を窺っていたところへ鳳蓮・ピエール・アルフォンゾが押し掛けてきた。この時点で既に呉島光実の計画が半ば破綻しかかっていたのは、彼の困り果てたような表情から明白だった。実際、鳳蓮・ピエール・アルフォンゾの行動を制御するのは難しい。ところが、さらに事態を混乱させたのはインベスの大集団の出現だった。
これが偶然の出来事であるのか、作戦であるのかは現時点では明らかではないが、仕組まれた行為ではないと見るには無理がある。インベスの大群の出現による大混乱の中で、常に勝敗しか頭にないアーマードライダーバロンはインベス軍団を放置して先にヘルヘイムの森へ向かい、アーマードライダーブラーボも続き、アーマードライダーグリドンに至ってはインベスにロックシードを与えて強化して、アーマードライダー龍玄の奮戦を妨害する卑怯な行動にまでも出た上で、アーマードライダー黒影とともに出立し、アーマードライダー龍玄=呉島光実の出立は大いに出遅れた。これを換言するなら、ロックシード採集のゲーム参加者の行動が分散されたことで採集の本格化は遅れ、その間にアーマードライダー斬月=呉島貴虎が出動する隙が生まれたということだ。これはユグドラシルの「プロジェクト」を破綻させることなく呉島貴虎だけには痛い目に遭わせることのできる作戦であるに相違ない。シドがプロフェッサー凌馬の力を借りて仕組んだ事態だったと考えるのが自然ではないだろうか。
これまで呉島光実は常に巧妙な策略によって事態を好転させてきたが、今回は全て裏目に出た感がある。だが、ヘルヘイムの森においてそれが反転しないとも限らない。なぜなら先行したアーマードライダーバロンやアーマードライダーブラーボは先行した分だけアーマードライダー斬月からの攻撃を多めに受けるはずであるし、出遅れたアーマードライダー龍玄は到着した時点で既に戦闘が始まっていれば、それに備えることもできるはずだからだ。仮面ライダービースト=仁藤攻介(永瀬匡)であれば、これを「ピンチはチャンス」と云うことだろう。
ところで、ユグドラシル幹部の呉島家の豪邸の玄関ホールの、帝王階段における兄弟の会話が今回も興味深かった。弟の呉島光実は兄の呉島貴虎がインベスについて何か知っている気配でも窺えないかと期待して無理に声をかけた様子だったが、兄は慎重に言葉を選んで、何も知らないかのように装った。興味深かったのはその会話の過程で弟が「ユグドラシルは、この街の全てを支配してるわけでしょ?だったら、怪物のことも、もう調査してるんじゃないかなあと思って」と発言したとき、兄が即座に「ユグドラシルは、この街を理想的な医療福祉都市にするためバックアップしているだけだ。支配などしてはいない」と反論したことだ。
これが物語るのは、大企業ユグドラシルが、沢芽市を理想の医療福祉都市とする計画の実現に協力するという形で、沢芽市を支配しているということだろう。沢芽市を医療福祉特区とすることで、沢芽市の福祉行政を民営化して、全てユグドラシルの事業としていることさえも想像される。