仮面ライダードライブ第二話

平成「仮面ライダー」第十六作「仮面ライダードライブ」。
第二話「仮面ライダーとはなにか」。
警視庁特状課巡査の泊進ノ介(竹内涼真)に変身能力を授けたベルトさん(声:クリス・ペプラー)は、人間ではないが、人間と同じように睡眠を取って夢を見ることがあるらしい。ベルトさん自身も「ベルトになっても面倒な性質が残っている」と述べていた。この第二話の冒頭には、ベルトさんが夢に見た悪夢のような回想があった。そこにおいて、一人の科学者、クリム・スタインベルトクリス・ペプラー)はロイミュードに襲撃され、殺害されたが、息を引き取ろうとしていた瞬間にも、ロイミュードを野放しにしたまま去るわけにはゆかないとの使命感に燃えていた。どうやらクリム・スタインベルトは己に危機が迫っていることを予感し、予め己の頭脳をベルトに移植して生き残りを図りながら、ドライブに変身して戦い得る体質の持ち主を探し求めることにしたらしい。そのベルトこそがベルトさんであり、待望の体質の主が泊進ノ介だった。
見落とせないのは、クリム・スタインベルトロイミュードの危険性を把握して、それへの対処法をも考案し得ていたという一点であり、このことは彼がロイミュードを充分に知っているということ、換言すれば、近しい関係にさえもあるのかもしれないということを示唆し得る。ロイミュードを退治し得る力を開発したクリム・スタインベルトこそは、同時に、ロイミュードを生み出した張本人ではないのか?と疑われよう。
実のところ、もともと優秀な刑事である泊進ノ介は、最初からそのことを感じ取っていたようだ。通常の人間にはどうにも対処しようもない厄介な相手に対処し得る力があるとすれば、それは当の厄介な相手と同質の力のみではないか?というのが泊進ノ介の見解だった。
悪の力と同じ力を用いて悪と闘うというのは「仮面ライダー」という物語の基本をなす構造で、そこにヒーローの悲劇性が生まれるが、今回の「仮面ライダードライブ」ではそのことが早くも第二話の冒頭において、一人の科学者の非業の死を通して明確に予告されたと見ることができる。
ところで、仮面ライダーは男子の物語であり、男子である主人公の一番の相棒は男子であって女子の果たし得る役割は必ずしも大きくはないのが普通であるように思われるが、今回は、泊進ノ介の同僚の中で唯一の常識人である女性警察官の詩島霧子(内田理央)が、今のところ、一番の頼りになる相棒として活躍しつつある。同じ脚本家による「仮面ライダーW」でも、左翔太郎(桐山漣)の上司として鳴海亜樹子(山本ひかる)が大いに活躍したことが想起されるが、この探偵事務所長は結局、照井竜(木ノ本嶺浩)と結婚してしまったわけであるから、左翔太郎の真の相棒だったとは云い難い。そもそも左翔太郎の真の相棒はフィリップ=園咲來人(菅田将暉)であって、鳴海亜樹子ではない。そう考えるなら、現時点における泊進ノ介と詩島霧子の関係は、やはり「仮面ライダーオーズ」における後藤慎太郎(君嶋麻耶)と里中エリカ(有末麻祐子)の関係を連想させる。
そして今回はロイミュードの幹部三人が揃い踏みを見せた。真赤な、派手なコートを着て真赤な車を乗り回し、陽気な中にも貫禄を漂わせる首領のハート(蕨野友也)。そんなハートの「自由で無警戒で目立ちたがり屋」の性格に少々苦言を呈しながらも、確り補佐役をつとめている様子のブレン(松島庄汰)。そして最後に合流したのが、ハートとブレンから待望されていた刺客のチェイス上遠野太洸)。
悪い奴等が妙に格好良く、しかも楽しくもあるのは、これまた「仮面ライダーオーズ」におけるウヴァ(山田悠介)、カザリ(橋本汰斗)以来だろうか。
ロイミュードのハート&ブレンは、配下のロイミュードの「魂」に新たな「体」を授けて復活させようとしている。身体を授かったロイミュードは様々な人間の身体にそれぞれの美質を探し求め、それらを集めて取り込んで最強の身体を作り上げようとしているらしい。様々な部品を組み立てて最強の「ボディ」を構成するという発想は、まるでトラック野郎や暴走族の自動車の改造のようでもある。
ロイミュードが多くの人間を襲撃する理由は、最強の部品を集めることにあった。襲撃されて「赤色化」して倒れていた被害者は、殺害されようとして未遂に終わったのではなく、誘拐されかけたところで幸か不幸か美質を見出されなかったおかげで放置されただけだった。真の被害者は、誘拐されて、その身体の美質を複写された人々だったのだ。
連続赤色化殺人未遂事件のこのような真相を見抜いたのは泊進ノ介。事件現場に残されていた僅かな痕跡からその気配を見出し、見事な推理によって真相に達した。反面、彼の行動を促したのは、刑事としてのかつての相棒であり今も一番の親友である早瀬明(滝口幸広)への思いだった。誰よりも鋭く考える力を具えながら「考えるのを止めた」と云って行動に徹してみせる熱さもあるのが、泊進ノ介という人物の面白さだろう。
今回の事件で退治された真犯人、アイアンロイミュード(横山真史)がドライブ=泊進ノ介を「仮面ライダー」と呼んだことから、泊進ノ介は今後、「仮面ライダードライブ」と呼ばれることになる模様。