きょうは会社休みます第五話

水曜ドラマ「きょうは会社休みます。」第五話。
放送日に見ることを得なかったのを漸く見たが、実に激動の展開があった。
青石花笑(綾瀬はるか)と田之倉悠斗(福士蒼汰)との幸福な関係が、鳴滝ならぬ鳴前ひろ乃(古畑星夏)によって卑劣にも引き裂かれようとしているのだ。
田之倉悠斗に片思いを抱いて苦しんでいると自称する鳴滝ひろ乃に対して青石花笑は同情を抱いてしまっているが、事態を云わば「神」の視座から鳥瞰し得る視聴者の眼には、青石花笑が見事に騙されているとしか映らない。なぜなら鳴滝ひろ乃は田之倉悠斗への接近を図るべく用意周到に計略を仕掛けてきているから。多分この女は、武士沢吉洋(田口浩正)の料理店「紅岩」で田之倉悠斗が青石花笑と一緒にいたのを目撃した時点で既に、田之倉悠斗が青石花笑をこそ選んだのであることを察し得ていたに相違ない。察したからこそ青石花笑に接近して、田之倉悠斗への己を想いを語り、己の苦悩を力説して揺さ振りをかけてきたのだ。これを謀略と云わずして何と云おうか。
そして恐らくは田之倉悠斗は、鳴滝ひろ乃の斯かる卑劣で下品な本性を予て半ば見破っていたのではなかろうか。そう解するとき初めて、田之倉悠斗が青石花笑の「わたしたち」という語に過剰に反応してそれを偽善と批判した理由を万全に推理できる。青石花笑は鳴滝ひろ乃を自身と同じく恋に憧れつつも恋に臆病な女子であると思い込み、「わたしたち」という語で同胞意識を語りつつ、恋愛経験豊富であると見受ける田之倉悠斗との対比を語ったが、真相は全く異なっていると想像できる。田之倉悠斗が青石花笑と同じく暖かな愛をこそ求めているのに対し、鳴滝ひろ乃は身震いを惹起するような恐怖と興奮に満ちた非情のギャンブル、催淫のゲームとして恋を楽しもうとしていて、だからこそ田之倉悠斗は、鳴滝ひろ乃からの熱烈な好意を相手にしようともしていないのだろう。
他方、サフィラストレーディングを追放された朝尾侑(玉木宏)も、苦悩を乗り越えて再始動。新事業を企図して動き始めると同時に、サフィラストレーディングの消滅によって迷惑をかけた各方面への補償を着実に遂行してみせて、その営業手腕への評価を取り戻した。しかもそのことが、青石花笑を振り回すことに繋がったばかりか、大川瞳(仲里依紗)や加々見龍生(千葉雄大)の感情を大いに乱して、相変わらずの存在感。
朝尾侑の魅力が何を考えているのか定かではない点にあるとは大川瞳の言だが、もっと何を考えているのか定かではないのが大城壮(田口淳之介)。仕事における優秀性と誠意は疑うべくもないが、周囲の男女関係に対する彼の関心の強さ、ことに青石花笑と加々美龍生に対する興味と好意と節介が何に起因するのか明らかではないし、彼自身の男女関係が謎に包まれていることも勝浦大知(渡辺邦斗)によって語られた。大城壮の謎も解かれるときが来るのだろうか。
さらに物語とは何の関係もないところで存在感を発揮したのが鮫島栄彦(水上剣星)。第一話の時点では隠れオネエであると云われていたが、今や隠そうともしていないように見える。朝尾侑に好意を抱いていたことを明かした。「日に日にカミングアウトしてきている」とは勝浦大知の言だが、どうやら勝浦大知にも鮫島栄彦は好意を抱いていた模様。