仮面ライダードライブ第六話

平成「仮面ライダー」第十六作「仮面ライダードライブ」。
第六話「戦士はだれのために戦うのか」。
先週の第五話では「本当に信頼できる人間は限られる」こと、そして怪物に抗して人間を守ることはその人間が悪事を働いている場合には悪事に加担することにもなりかねないことが明かされた。
今週の第六話が描いたのはその裏面の意味。警視庁特状課巡査の泊進ノ介(竹内涼真)の一寸頼りなさそうな上司、特状課長の本願寺純(片岡鶴太郎)が述べたように、「世の中、嫌な人間ばかりじゃないってことですよ」ということだった。
クラッシュ(安田大サーカス=HIRO)と、その子分であるロイミュード075(安田大サーカス=クロちゃん)から襲撃を受けていた健康食品会社フォントアールの社長の倉持満(水野智則)は液状の爆薬を密輸していた犯罪者だったし、特状課に介入してきた警視庁公安部警視の桐原英治(小林高鹿)はその共犯者だった。このことは「信頼できる人間は限られる」ことの証明であり、人間を助けることが悪事に加担することの証明でもあった。
しかし反面、フォントアールの輸送車の運転手をつとめる市川勇蔵(山本康平)は、危機のとき助けてくれた「仮面ライダー」に恩を感じ、恩返しをしたいと願っていた結果、怪物に倒されていた「刑事さん」を発見し、救助した。悪事を働いていたフォントアールの中にも、善人がいた。
桐原英治に加担して特状課を裏切ったかに見えた特状課客員研究員の沢神りんな(吉井怜)も実は、最初から桐原英治を疑い、その狙いを探るため行動していた。しかもこの電子物理学者こそは、仮面ライダードライブの開発者であり変身ベルトでもあるベルトさん(声:クリス・ペプラー)の右腕として、武器の整備を引き受けていた。先週の第五話で、ベルトさんは特状課の仲間であっても「本当に信頼できる人間は限られる」と述べたわけだが、実のところはその特状課の中に最も信頼できる人間がいたということに他ならない。
泊進ノ介=仮面ライダードライブは常に人間(「市民」)を守ろうとしているが、人間の中にも悪人がいる以上、人間を守ることは悪事に加担することでもあり得る。そのことを嘲笑したのが先週の第五話における死神チェイス上遠野太洸)だった。「正義の味方」を気取る仮面ライダーが、正義に反していたことを軽蔑したのだ。だが、これに対して今回、警察官の泊進ノ介は明確に反論してみせた。彼は正義を守る前に先ずは人間を守る。そして守った上で、その犯罪を許さない。刑事であると同時に仮面ライダーであることの意味が、ここに明確化したと云うことができる。
面白いことに、泊進ノ介や詩島霧子(内田理央)とは正反対の目に遭ったのが、ロイミュード軍団のハート(蕨野友也)、ブレン(松島庄汰)の両名だった。ハートは、乱暴者のクラッシュ一味を自由に暴れさせておけば人間や仮面ライダーに打撃を与え得ると期待し、ブレンもその意図に従っていたのだろうが、結局は、クラッシュは存分に暴れ回るための道具として「大量のバイラルコア」を盗んで去った。まさしく飼い犬に手を噛まれた状態だった。クラッシュのこの所業を、ハートは「盗賊そのもの」と形容して笑っていたが、なるほど、人間の中にも強盗がいたように、ロイミュードの中にも「盗賊」がいたのだ。
ところで、このバイラルコアについてブレンは「ロイミュードの肉体の元」であると説明し、一気に使えば大変なことになる代物であるとも述べていたが、そのことは何を物語るのか。今回、ロイミュード075が当のバイラルコアと思しい青い物体を三個まとめて摂取して巨大な蛇になっていたが、仮にそのようにして強化したことで人間や仮面ライダーを圧倒できるのであれば(実際には全然できなかったとはいえ)、ハートやブレンにとって必ずしも悪い話ではないようにも思われる。しかるに両名の様子から窺うに、バイラルコアを大量に摂取されるのは不都合であると見受ける。なぜか。中途半端な雑魚の強化は却って面倒であるということだろうか。それとも、希少な物体であり、一部の者に独占されるのは他のロイミュードの復活を妨げるということだろうか。