きょうは会社休みます第六話

水曜ドラマ「きょうは会社休みます。」第六話。
青石花笑(綾瀬はるか)と田之倉悠斗(福士蒼汰)が無事仲直りをして、さらに深い仲になってゆこうとするまでの過程をじっくり時間をかけて描いた一話。両名とも、それぞれに互いを想い、己の言動を後悔し、別れたくないと思いながらも捨てられるかもしれないと恐れて、話しかけようとしながらも話しかける勇気を欠いたまま、過ぎてゆく数日間の物語。
しかも二人の間には接点がない中で、二人にはそれぞれ奇妙な事件が連発し、青石花笑は得意の妄想を繰り広げた。実に濃密な面白さがあった。
妄想で面白かったのは無論、「フランダースの犬」の名場面。田之倉悠斗が若い女との結婚を決め、帝江物産の同僚は皆で祝福し、苦しんでいた青石花笑に対しては結婚式の牧師の役をやらせようとして、それを拒否して逃げ去る青石花笑に背後から「青石さん、優秀ですから」の合唱を打つける…という残酷な場面に続いて、教会の大壁画を見詰めて凍え死のうとする青石花笑の場面が来た。かたわらには青石家の愛犬マモル。フランドルの少年の愛犬パトラッシュならぬマモルッシュ。リューベンスの大壁画の中央には田之倉悠斗と鳴前ひろ乃(古畑星夏)。その左右には受難曲を合唱する帝江物産デザート原料課の立花貴昭(吹越満)、大城壮(田口淳之介)、鮫島栄彦(水上剣星)、勝浦大知(渡辺邦斗)。厳粛な喜劇だった。
他方、青石花笑が繰り広げた数々の事件の中で最も大きかった事件には、田之倉悠斗も巻き込まれていた。加々見龍生(千葉雄大)の報われそうにない(ように見える)片想いを変な方向で応援し続けている大城壮は、なぜか田之倉悠斗をそこに巻き込んだ。結果、田之倉悠斗は大城壮の語る青石花笑の人の良さ、魅力を聴かされて、自身の想いをあらためて見詰め直した。対するに青石花笑も、加々見龍生の悩みを聴かされ、相談され、それに応えようとする中で、自身の取るべき道を見極めた。青石花笑は加々見龍生のために、大城壮が与えていたよりも遥かに良い助言を与えていたが、その助言は自身への助言にもなった。喜劇そのもののような楽しい挿話が主人公の心を導き、物語を方向付けた。ここの展開も面白かった。
大城壮は加々見龍生に「壁ドン」の威力を力説したが、それをかたわらで聴いていた田之倉悠斗が何とも複雑な表情をしていたのも傑作だった。
劇中一番の常識人かと見えていた大城壮が実は一番の「ラビリンス」であるかもしれないことが明らかになってきたのと同時に、最も「ラビリンス」であると見られている加々見龍生が実は意外に真直ぐ純粋で、その点ではどことなく青石花笑に近いのかもしれないことも明らかになってきたところも、今宵の第六話の見所の一つ。
朝尾侑(玉木宏)が、田之倉悠斗に対する青石花笑の恋を暖かく応援しておきながら、同時に田之倉悠斗に対してライヴァル心を決して隠そうとはしていないのも格好よい。