仮面ライダードライブ第七話

平成「仮面ライダー」第十六作「仮面ライダードライブ」。
第七話「決定的瞬間はいかに撮影されたのか」。
仮面ライダードライブへの変身者であると同時に警視庁特状課巡査でもある泊進ノ介(竹内涼真)の、現在の相棒は詩島霧子(内田理央)。なにしろベルトさん(声:クリス・ペプラー)とともに仮面ライダードライブを支える仲間であり、同時に現在の同僚の一人でもある。泊進ノ介と詩島霧子との間の特別な信頼関係は、第三話から第四話にかけて描かれた画家ロイミュード事件を通して確立した。
だが、このことは泊進ノ介にとっては早瀬明(滝口幸弘)との関係の変容を余儀なくされる事態でもあり得る。かつて彼の同僚の一人だった早瀬明は、半年前までは彼の無二の相棒であって、今も大親友だが、半年前の「グローバルフリーズ」に際して負傷したことで長期間の療養生活に入り、復帰の望みを絶たれて警察官を退職せざるを得なくなった結果、もはや彼の相棒ではあり得なくなっていた。それでもなお彼は、この大親友を無二の相棒だったと信じているし、多分、今なお信じている。しかるにそうした中で現実には彼は詩島霧子という新しい相棒を得て、恐らくは半年前までの彼をはるかに凌ぐ精力で活動しつつある。早瀬明は彼の無二の相棒だったには相違ないが、今の彼の相棒は、どう見ても詩島霧子だろう。
だが、たとえ現実がそうであるとしても、彼の感情を力ずくで変更することはできない。
今朝の話の前半で提起されたのはそうした感情の問題に他ならない。泊進ノ介は詩島霧子を現在の大切な相棒であると思っていはいるが、早瀬明を今なお大切な相棒であると思っていて、早瀬明と自身との特別な関係を「俺たちだけの特別な時間」という語で表した。だが、「特別な時間」はどのように特別であるのか。詩島霧子はそこに「男同士」の友情を見出した。もし「特別な時間」の基底にあるのが「男同士」の感情であるなら、男ではなく女である詩島霧子には、どう頑張ってもそこへ入る余地がない。詩島霧子が何時になく激しく嫉妬せざるを得なかったのは当然だろう。
今回の高層建築物連続崩落事件をめぐる東都タイムス記者の高杉憲太(内野謙太)と同社カメラマンの久坂俊介(永岡卓也)との関係も云わば「男同士」の愛憎半ばする複雑な関係であり、高杉憲太に対する泊進ノ介の無根拠の信用も「男同士」であることによる直感だが、さらに面白いことに、仮面ライダーを倒すことにしか興味がないとまで云い切る死神チェイス上遠野太洸)の感情も、「男同士」であるからこその敵対心であるのかもしれない。
こうした中で詩島霧子が性別の壁を超えて泊進ノ介の真の相棒であるべく生命をも賭して立ち上がったのが今朝の話の最後の瞬間で、そのあと果たしてどうなったのかは、次週まで待つしかない。
ところで、今回の話では新規な事実が幾つか出てきた。
(一)
警視庁が取り組んでいる高層建築物連続崩落事件は、ロイミュードの関与を想像させる謎の事件ではあるが、どの現場にも重加速反応の痕跡がなかった。ゆえに「特殊状況下事件」ではないと認定され、警視庁特殊状況下事件捜査課=特状課の出る幕はないと考えられていた。これは泊進ノ介=仮面ライダードライブが事件の捜査に関与できないという点では厄介な状況であるようにも見えるが、実のところ、現場をどれだけ調べても何の手掛かりも得ることができないのがこの事件の本質である以上、捜査から離れて自由に事件に取り組み得るのは、真の解決のためには有利であると見ることもできる。
(二)
この事件の特殊性は、ロイミュードが人間と結託して犯行に及んでいる点にある。スクーパーのロイミュードは東都タイムスの久坂俊介を(ここでも!)相棒にして活動していた。ここにおいて、今までのような、ロイミュードが人間に敵対するという単純な関係は崩落している。第一話と第二話の事件ではロイミュードが人間を襲っていた。第三話と第四話の事件ではロイミュードが人間の身体を乗っ取って悪事を働いていた。第五話と第六話の事件ではロイミュードが人間を襲撃していたが、襲撃された人間は実は悪事を働いていた。だから泊進ノ介は、仮面ライダーとしてはロイミュードを倒し、刑事としては悪人を逮捕した。しかるに今回の事件ではロイミュードと人間が一緒になって事件を起こしているのだ。
(三)
とはいえ、久坂俊介はどう見ても正気ではない。実際、スクーパーは久坂俊介に備わる欲望を煽動して増幅させて相棒にしていた。これに関してロイミュードの強化の過程が明かされたのは、今朝の話における最も新規な事実であると云える。
ロイミュード幹部のブレン(松島庄汰)と首領ハート(蕨野友也)が述べていたところによると、ロイミュードが力を獲得するためには、強い欲望を抱く人間を見出し、複写してその人間になり切ることから始めなければならない。その人間の欲望に基づいて悪事を働き、自身の力を強化してゆくのだ。だが、その人間の欲望が大して強くなかった場合、ロイミュードの強化は期待できない。今回の事件の新規性は、スクープを欲求する久坂俊介を見出してスクーパーとなったロイミュードが、大して強くもなかった久坂俊介の欲望を煽り、悪事の連発に関与させて欲望を次々満たさせながら増幅させることで、自身の強化を図っていた点にある。ブレンに云わせれば、このことはロイミュードの新たな進化の可能性を拓く道に他ならない。
(四)
泊進ノ介は有能な刑事だが、どうも今回は鈍い面があり、むしろ詩島霧子の方が鋭い。なにしろ泊進ノ介は、重加速反応の見られない高層建築物連続崩落事件にはロイミュードの関与はないかもしれないと思い込んでいたのに対し、詩島霧子はロイミュードの関与がないとは云い切れないと感じていた。
これに関して気になるのは、泊進ノ介が「男同士」の「共感」によって高杉憲太を全く疑おうともしていないのに対し、詩島霧子が高杉憲太を久坂俊介の共犯者であると疑っている点だろう。何れの直感が当たるのだろうか。それも次週まで待つしかない。