きょうは会社休みます第七話

水曜ドラマ「きょうは会社休みます。」第七話。
青石花笑(綾瀬はるか)と田之倉悠斗(福士蒼汰)が同棲を始めたが、青石花笑はそのために色々無理をしてしまい、田之倉悠斗も己の若さのゆえの力の足りなさを痛感させられ、互いに挫折しかけたところで、風邪で寝込んだ田之倉悠斗を青石花笑があたかも家族のように看病する出来事があって、結果、田之倉悠斗は自力で家族を営めるだけの「一人前」の男になるまで努力するため、そして青石花笑は家族と一緒に暮らす時間をもう暫く大切にするため、同棲を暫し延期することを決意した話。
構造としては極めて明快だが、味わい深い場面も要素も多かったのは何時もの通り。
例えば、青石花笑は、田之倉悠斗が住んでいる独身者用マンションで仮の同棲を始めるにあたって、青石邸の日用品等を色々持参したが、ここに青石花笑の人生観が表れている。多分、既に何年間か一人暮らしを営んできたらしい田之倉悠斗は青石花笑が身一つで転がり込んでくれば良いとしか思っていなかったのだろうが、今まで一人暮らしなんか計画したことさえもなかったらしい青石花笑はそうは考えなかった。青石花笑にとって日常生活は家族と一緒に営まれるものであり、両親が築き上げてきた環境を分かち合うものであり、ゆえに両親から別れるときにも両親が作り上げた生活の一部を分け与えられ、受け継いでゆくのでなければならないのだろう。母の青石光代(高畑淳子)と父の青石巌(浅野和之)は、愛娘が家を出てゆくのは結婚して新しい家庭を築こうとするときでしかあり得ないと考えていたが、それは青石家におけるこのような人生観、家庭観からの必然の帰結であると見ることができる。
このことを良く表していたのが氷枕と湯タンポとネギの話であるのは見易い。青石花笑は幼少時から、風邪を引いたときには母が氷枕と湯タンポとネギで看病してくれて、それで快復してきた。青石光代はそれらの頼もしい道具を、ことに頼もしい氷枕を、やがては嫁入り道具として娘に持たせてやることを当時から約束していた。そして今、恋人の看病のため、ネギを巻くタオルとともに湯タンポを持ってゆこうとしていた娘に、母は嫁入り道具の、「青石花笑」の名前の書かれた氷枕をも忘れないように持たせた。青石花笑は、母がやってくれたのと同じように氷枕と湯タンポとネギで田之倉悠斗を看病した。
青石花笑にとって幸福は家族との生活の中にしかなく、ゆえに青石花笑が家を出てもなお幸福であるためには、田之倉悠斗が青石花笑と一緒に新しい家族を築き上げるか、さもなくば青石花笑が田之倉悠斗を養って家族を築き上げるか、何れかでしかない。同棲の準備の過程で己の足りなさを実感させられていた田之倉悠斗が明確に同棲の延期を決意するには、これは良い出来事だったろう。
他方、二人の周囲も一段と濃厚になってきている。特に加々見龍生(千葉雄大)と大城壮(田口淳之介)は、今や影の主人公であると云うも過言ではない程に輝いている。前回、大城壮は加々美龍生に「壁ドン」の技を伝授して、大川瞳(仲里依紗)を口説き落させようとして、結局は、失敗した加々美龍生から怒りの「壁ドン」をされて慌てていたが、今回は、新たな技として「頭をポンポンポンと三回叩く」を伝授。しかし結局、これを実行したのは大城壮だけ。相手は大川瞳を怒らせて落ち込んでいた加々美龍生。満面の笑顔で「いいぞ!加々美。その調子、その調子」とも云っていたが、本当に勝算があって云っているのだろうか。大川瞳が怒ったとき、大城壮は加々美龍生を庇いながら大川瞳を宥めようとして「もっとグローバルな視点で加々美のこと見て上げようよ」と発言していたが、この不可解な言動が火に油を注いだ恐れもあるかもしれない。同棲のためのキャリーバッグを携えていた青石花笑を目撃して、これから百貨店のクリアランスセールへ出かけようとしているに相違ないと勝手に思い込んだ大城壮の、「ハヴアナイスバーゲン!」発言も変だが、社内のエレベーターで朝尾侑(玉木宏)に遭遇したときの「ワーオ!」発言もさり気なく変で、大城壮の只者ではない感じを表している。落ち込んでいても大盛カレーを食べれば大丈夫!風邪で辛くても大盛カレーを食べれば大丈夫!カレーで「お疲れー」!と云って加々美龍生をカレー店に誘った大城壮が自身はカレーではなくオムライスを注文していたのも凄い。オムライスを匙で三回叩いていたのは「頭をポンポンポンと三回叩く」の実践だったろうか。そして今回の話の最後には、夜の街で、青石花笑が男子と一緒に仲良く歩いているのを目撃して、その相手は噂の「マモル」に相違ないと思い込んだ大城壮が、陽気に挨拶しながら近付いてその顔を見て、田之倉悠斗だったことに気付いたときの、「マモ…倉?」発言があった。