きょうは会社休みます第十話=最終回

水曜ドラマ「きょうは会社休みます。」第十話=最終回。
青石花笑(綾瀬はるか)は田之倉悠斗(福士蒼汰)への自身の想いを見詰め直し、付き合いをやり直すことになったが、そのための契機をなしたのは朝尾侑(玉木宏)だったのか?と考えるに、そうではなかった。
朝尾侑は青石花笑を振り向かせるため様々な努力を重ねていた。特に大きかったのは、彼に対する青石花笑の態度が田之倉悠斗に対する青石花笑の態度とは異なっていることを明確に指摘してその意味を問いかけた点だろう。無論これは視聴者が気にしていたところでもある。青石花笑にとって真に心地よいのは、田之倉悠斗との間の緊張と興奮に満ちた関係ではなく、朝尾侑との間の何の遠慮も要らない気楽な関係ではないのか?という点を、朝尾侑は青石花笑に突き付けたのだ。青石花笑自身も内心そのように感じてもいたようで、ゆえに青石花笑も俄かに動揺していたようだったが、結局は、朝尾侑との心地よい関係よりも、田之倉悠斗に会いたいという想いの方が己の中で勝っていることを自覚するに至った。
自覚の契機は、田之倉悠斗からのメイルの到着だった。その瞬間、その到着を待望し続けていたことを自覚し、己の本心を自覚した。これまでの物語の中では殆ど常に、朝尾侑が田之倉悠斗を攻撃しながら青石花笑の恋を応援していたようなところがあったが、ここにおいて遂に、田之倉悠斗が力ずくで青石花笑の心を引き戻し、青石花笑は朝尾侑に応援されることなく、むしろ朝尾侑の言を拒絶するような格好で自身の本心を明らかにし、大人の余裕で見守ってきた朝尾侑は、この瞬間だけ、余裕をなくした。
実に面白い展開だったのではないだろうか。
朝尾侑は青石花笑に「ずっと独りでいるつもり?」と聞いたが、これは彼自身の嘆きを表していた。朝尾侑は不器用にも一途に恋する青石花笑に恋をしているが、青石花笑の恋は彼へ向かうことなく田之倉悠斗へ向いたままである以上、彼は今までと同じく今後も、田之倉悠斗に恋する青石花笑を恋し続けなければならないのだろう。
大城壮(田口淳之介)の本心も明らかになった。彼は青石花笑を大切に想っていた。彼は誰に対しても応援せずにはいられない人物であるようだが、特に青石花笑に対しては常に全力で真剣に応援し続けていた。それは青石花笑を特別に大切に想っていたからだった。もちろん彼はその本心を誰にも明かそうとはしなかったが、一人、朝尾侑だけはそこに気付いた。同志だからだろう。
それにしても大城壮の応援の姿勢は徹底していた。田之倉悠斗が米国への留学へ発つべく街を去ろうとしていることについて、日時、移動手段とその出立の地点までも正確に把握して、その情報の全てをさり気なく青石花笑に提供してみせた。田之倉悠斗に連絡して聴取していたのだろうが、情報の全ては青石花笑に提供するためにしか意味をなさない類のものであり、青石花笑が何を思ってどのように行動することになるのかを全て予想できていたとしか云いようがない。朝尾侑もまた、肉料理で米国大陸の形を作っておいたものを青石花笑の目に付く場所に置いておくことで、田之倉悠斗への青石花笑の想いをかき立ててみせた。
朝尾侑と大城壮が二人揃って青石花笑の恋を応援したわけだが、正確には、朝尾侑が大城壮を同志と見抜き、大城壮の行動力を信じ、一緒に応援するように仕向けたと云うべきだろう。朝尾侑の大人の余裕と、大城壮の曇りない明るさが見事に調和して、これもまた実に面白い展開だった。