ロドルフ殿下やコーダー伯爵やセラン城主
今日は快晴で暖かい日だった。
ところで。
遠い昔、ネッスル(ネスレ)社の即席珈琲の一つとして「珈琲の貴族」と銘打たれたネスカフェ・プレジデントという商品があり、そのテレヴィCMが実に優雅な雰囲気を醸し出していて、ことに音楽が豪壮華麗だったのを微かに記憶していた。あらためて観てみたいと予て願望していたところ、先日、youtubeで検索して三本のCMを見出し得た。クロイー・ルール家のロドルフ殿下の出演作と、マクベスの家系を継ぐコーダー伯爵の出演作、セラン城主プランス・ド・ラ・トレムイユの出演作。殿下とか伯爵とか王子とか呼ばれる程の高貴な人々がどういうわけか日本の即席珈琲を飲んでいるという実に面白い趣向の連作で、傑作と評されて然るべきだろう。
動画三本を見出して以来、幾度か見直してきたが、今日、不図そこで使用されている豪奢な音楽の作者が気になり、さらに検索してみれば、驚くべきかな、すぎやまこういち先生の作品だったらしい。セラン城主の版ではフルートと弦楽とチェンバロのみを用いて清らかな響きを作り出しているが、コーダー伯爵やロドルフ殿下の版では冒頭にホルンを盛大に用いて、いかにも昔日の封建領主が狩猟を嗜んだ様子を連想させる。ホルンに唱和する弦楽の鋭い響きが実にバロック風で、古雅な趣を強調している。実に素晴らしい。