放課後ヒーローの終わり方

ウダノゾミの漫画『放課後ヒーロー』は全二十三話から成り、かつては全四巻の単行本に収録されていたらしいが、今年の四月二十二日に発行された新装版は全二巻に集約されている。面白いことに、新装版の第一巻の巻末には旧版の第一巻と第二巻の後書が収録され、新装版の第二巻には旧版の第三巻と第四巻の後書が収録されている。様々な機会に制作されたイラストの数々も新装版の各巻末に収録されていて、いかにも集大成の感がある。さらに云えば、同じ作者による『田中くんはいつもけだるげ』の第5.5巻(Official Tanakabook)には『放課後ヒーロー』の前身をなす『ニコダス1/3』が収録され、初めて単行本化されたから、多分、現在は『放課後ヒーロー』という物語の全貌を容易に把握し得る状況になったということだろう。
これを読んで驚かされるのは、『田中くんはいつもけだるげ』と同じく奇妙な日常生活が続いてゆくのを淡々と描いてゆくかに見える『放課後ヒーロー』には、意外な程に確かな時間の流れがあり、小さな成長もあり、物語の結末までもあるという事実。第一話の冒頭を見る限り、物語は何の説明もなく唐突に始まったかに見えていたが、その始まりには実は明確な発端があり、最終話(第二十三話)においてその発端は明らかにされた。しかも、その発端の意味は物語の流れゆく中で徐々に明らかにされた主人公の秘密を踏まえたとき真に解される。そこにおいて物語は完全に終結したと見るべきで、そこまで読み終えたときには祭のあとの寂しさを感じないではなかった。果たして『田中くんはいつもけだるげ』にもこのような完全な終結の秋が来るのだろうか。

新装版 放課後ヒーロー(1) (ガンガンコミックスONLINE) 新装版 放課後ヒーロー(2)(完) (ガンガンコミックスONLINE) 田中くんはいつもけだるげ 5.5 OFFICIAL TANAKABOOK (ガンガンコミックスONLINE)