テレヴィアニメ怪盗ジョーカー第五十一話
テレヴィアニメ「怪盗ジョーカー」第四期。
第五十一話(シーズン4第十二話)「輝きを失った夜」。
今週もNTTひかりTVのWEB配信で視聴。
良かったところを書く前に先ずは良くなかったところを書かざるを得ない。
原作は小学館てんとう虫コロコロコミックス『怪盗ジョーカー』第二十二巻の「帰ってきた伝説のスパイ」だが、一部、第二十三巻の「不死鳥と魔弾の射手」も組み込んでいる。
これが果たして成功しているのかどうか、判断が難しい。敢えて厳しい感想を述べるなら、そもそも第一期から第二期までの物語の見事な完成度の高さに比較したとき、第三期から第四期までの物語は全体として散漫であるように感じられる。
それは当然で、第一期から第二期までの物語を構成したのは主にシャドウ・ジョーカーの物語、プロフェッサー・クローバーとシルバーハートの物語だが、何れもそのまま原作にある物語集であり、シャドウ・ジョーカーの真の敵はプロフェッサー・クローバーであるから二つの物語は自ずから一つの物語をなしているのに対し、第三期から第四期までの物語を構成する赤井翼=フェニックスの物語とプレジデントD=ダンプの物語はもともと原作にはない話であり、別個に成立し得る物語集でもあるから、どうしても一体感が弱い。第二期の最後にはシャドウ・ジョーカーがジョーカーの味方になって、ともにプロフェッサー・クローバーに対峙する熱い展開があったように、第四期にはプレジデントDがスペードの味方になる展開が来ていて、そして多分、ともにドクター・ネオに対峙する展開にもなるのかもしれないが、シャドウ・ジョーカーとジョーカーの共闘が第一期にも第二期にも時折あったのに対し、プレジデントDには第四十六話でスペードと懐かしく語り合う場面があった程度でしかない。ジョーカーと一緒に闘うのはフェニックスの役割であるに相違なく、実際、ジョーカーとフェニックスの共闘は繰り返されてきたが、結果、むしろ共闘するのが当たり前であるようになっている。
そこに熱さを感じさせ得る要素として、「不死鳥と魔弾の射手」のスナイパー幻魔を組み込んだのだろうと思われるが、原作では、スナイパー幻魔が手強い相手であることに意味がある。大切な友を失ったジョーカーの悲しみは、大切な友を奪った敵に対する怒りの感情を爆発させ、断じて許すことのできない強敵に対する凄まじい反撃に直結してゆく。生命こそが一番の宝であると信じ、怪盗には殺しの道具は必要ないと考えるジョーカーが、このときばかりは敢えて相手を殺しても構わないとまで覚悟を決める。しかるに今宵のアニメ版では、スナイパー幻魔はスペードによってあっさり倒されてしまったのだ。これでは熱気を生じようがない。
要するに、第三期から第四期までの物語には色々な要素を詰め込み過ぎていて、しかもそのような詰め込み過ぎた大きな物語の中にさらに原作の色々な話を組み込み過ぎていて、かなり勿体ないことになっている。第四十五話における原作「激突!天空忍合戦」の扱いには特にそのことを感じていたが、今宵の話における原作「不死鳥と魔弾の射手」の扱いにはさらにそのことを強く感じないわけにはゆかない。
とはいえ、ジョーカーに対するハチの思いの描写は第四期を通じて積み重ねられてきたこともあって、ジョーカーに見守られながら死にゆくハチの無念と(矛盾するようではあるが)幸福感も、ハチの死を受け容れることなんかできるわけもないジョーカーの衝撃も、ともに痛切に伝わって来た。絵が良かったし、小林由美子と村瀬歩の芝居も良かった。そこは良かった。