マギ第三巻/アラジン=ドラえもん

夜、大高忍『マギ』第三巻を読んだ。遊牧民族「黄牙」の村長ババ様とアラジンの心の交流が清々しく、読後感が実に良い。そして、アラジンが知らぬ間に既に「王の選定」を行っていたことを漸く自覚した瞬間(148頁)は静かな高揚感を生じる。
ここで第二巻、第一巻を振り返ってみれば、アラジンの選定の詞は「大丈夫かい?」「君の友だちさ!」「さあ!冒険の続きをしようよ」(第二巻124頁)だった。そのときのダンジョンのジンからは「一体なぜ、あんな小僧にしたのですか?」と呆れられてはいたが(同138頁)、アラジンが確かに「選定」していたことは、卑劣なチーシャン領主に対する「そんな大した人じゃないと思うよ」という冷たい一言に表れていた(同123頁)。しかもアラジンの選定は候補者との最初の出会いの日にまで遡る(第一巻76-85頁)。偶然の積み重ねでしかないかのように見せかけて全てが定めであることの面白さがある。
巻末には「マギおまけまんが たすけてアラジン」(188-189頁)が掲載されているが、どう見ても「ドラえもん」のパロディ。アリババが野比のび太、アラジンがドラえもん。編集部の担当者がジャイアンで、アリババは大高忍をも兼ねているのか。アラジンはドラヤキを食べながら漫画雑誌を読んでいるが、雑誌名は「サンデー」。アリババがアラジンに泣きつくときの表情や仕草も、アラジンが出した魔法の道具にアリババが喜び興奮しているときの表情や仕草も、いかにも野比のび太ドラえもんの雰囲気を再現している。なかなかの力作。