大河ドラマ風林火山第四十八話

NHK大河ドラマ風林火山」。演出:清水一彦。第四十八回「いざ川中島」。
川中島の決戦へ向け武田軍も出陣。それに先立ち山本勘助内野聖陽)の養女として山本家に住まう原虎胤(宍戸開)の娘リツ(前田亜季)は、勘助の娘として、香坂弾正虎綱(田中幸太朗)に嫁ぐことを決意したことを勘助に告げ、留守中の家を確り守る意であることを約した。これに対し勘助も、必ずや勝ちて帰ること、帰れば直ぐに香坂弾正とリツとの婚儀を挙行する意であることを約した。そして翌朝の出陣のとき、山本家中で河原村伝兵衛(有薗芳記)と双璧をなす家臣、葛笠太吉(有馬自由)の子、茂吉(内野謙太)が赤子との暫しの別れを惜しんでいたのも印象深い。主にも家臣にもそれぞれの生活があることを忘れてはならないのだ。
この度の川中島合戦は並みの軍とは違うことを、甲斐の武田家の誰もが認識していた。武田信繁嘉島典俊)は何時も以上に兄の補佐役として全軍を奮起させることに努め、武田信廉松尾敏伸)も絵筆を置いて軍に参画することを宣言し、信繁を喜ばせた。重臣の一人、馬場信春高橋和也)は、軍の方針に関して何時も勘助とは意見を異にすることが多いが、流石に今回は決戦を何としても勝ち抜くべく己の信念を貫き通そうとし、会議の席上、容易には引き下がらなかった。武田信玄市川亀治郎)も家中に高揚した戦意を最高度に盛り上げて統一すべく、馬場の意見をも採用し、勘助とともに協議するよう命じた。思えば、勘助と馬場の両名は、今でこそ、戦い方をめぐり考え方に違いがあるものの、かつてはともに諏訪において工作員として修羅場を潜り抜けてきた真の戦友でもあるのだ。駒井政武(高橋一生)が、信玄に対する勘助の一途な忠誠心について信玄の面前で不覚にも憧れの意を告白すれば、信玄もまた、文官・秘書官としての駒井の永年の労苦こそが武田家の統治を支えてきたのであると述べて労った。普段にも増して興奮気味の諸角虎定(加藤武)を含め、家中の誰もが、越後の上杉政虎Gacktガクト)との決戦を前に、異様な興奮状態にある。
そうした中、この決戦で初陣を飾るはずだった諏訪勝頼(池松壮亮)を出迎えるべく、勘助は諏訪を訪ね、先ずは勝頼の母、由布姫(柴本幸)の墓前にその報告をしたが、そこに姫の霊が現れ、「ならぬ」と告げた。勘助はその意を汲み、勝頼の初陣を一年後に延期すべきことを決めた。だが、姫の告げた「ならぬ」とは果たして勝頼の初陣のみについてだったのか、それとも勘助の出陣に対しても引き留めようとしていたのか。
信玄の陣中に驚異の報告一件。行方不明だった鬼美濃こと原虎胤が生存していたとのこと。養女リツの実の父でもある原美濃を迎えるべく勘助は現地へ。そこで目撃したのは、不気味な薬で原美濃を治療していた声の甲高い老婆おふく(緑魔子)。何でも知ってそうな様子のこの老婆に、勘助は川中島が霧に包まれる日が何時であるかを問うた。金銀の報酬を得るまでは何も教えようとはしない老婆に勘助は何枚もの金を与え、霧の出るのが明日であることを聴き出した。しかし勘助は多分ここにおいてさらに多大の金銀を差し出して老婆に固く約束させるべきではなかったか。この霧の予報について他の誰にも教えてはならぬ!と。