映画ハイ☆スピード!岩鳶中学水泳部記録会お疲れ様パーティーin両国国技館/鈴木達央のFree!再構築宣言

映画「ハイ☆スピード!」の特別イヴェント「岩鳶中学水泳部記録会お疲れ様パーティー」追加公演。in両国国技館
実に面白く、語り切れない程に盛り沢山で、ゆえに正確に想起して記述するのが予想以上に難しい。イヴェント全体のDVD化を願望せざるを得ない程。取り敢えず断片だけでも忘れない内に記しておくのみ。
先ずは、島崎信長鈴木達央豊永利行内山昂輝野島健児日野聡の六名それぞれが映画の中で印象深かった場面を選び、大いに語ったのが良かった。
記録会で橘真琴、桐嶋郁弥、椎名旭、七瀬遙が見事なメドレーリレーを実現した場面。七瀬家における合宿の夜、橘真琴と七瀬遙、椎名旭、桐嶋郁弥がティームワークについて語り合った場面。夜の岩鳶スイミングクラブで七瀬遙と橘真琴が着衣のまま遊泳したあと語り合った場面。桐嶋郁弥が思い出の場所へ走ったのを、椎名旭、橘真琴、七瀬遙が追いかけ、話を聞き、語りかけて激励し、桐嶋郁弥が大いに泣いて、大いに笑った場面。階段を降りていた七瀬遙が荷物を落としそうになったのを桐嶋夏也が助け、一緒に語らいながら歩いた場面。放課後の教室で落ち込んでいた桐嶋夏也を芹沢尚が訪ね、水泳部一年生四人について語らい合った場面。
次に、六人を三組に分けて、双六。短距離であるのに一向に進まない双六。司会進行役は野島健児日野聡。合間には、鴫野貴澄を演じた鈴木千尋がヴィデオでメッセージを寄せた。素晴らしく面白かった。鈴木千尋も、ここに来ていて欲しかった。鈴木千尋といえば、新海誠のデビュー作「ほしのこえ」における芝居も良かった。
朗読劇も面白かった。特典付プレミアム入場券を買っていた人々にはその特典としてドラマCDが送付されていたらしいが、この朗読劇はその続編。ゆえにドラマCDのダイジェスト版が先ずは会場内に流され、そのあとに出演者一同が舞台上に出てきて、朗読劇を開始。内容は「記録会お疲れ様パーティー」そのもの。六人それぞれ隠し芸を披露するという話だが、予定外の展開もあったようで、豊永利行は二度も即興で歌を歌い、鈴木達央は映画の主題歌を十三歳の橘真琴の声で歌った。
最後に色々な告知があったが、ここにおいて映画「ハイ☆スピード!」に続くべき「Free!」シリーズの新展開が予告され、鈴木達央が一段と熱く語った。
基本の事実は、先ずは今年の四月二十二日、劇場版「Free! -Timeless Medley-絆」が上映され、七月一日、劇場版「Free! -Timeless Medley-約束」が上映されること、次いで今年の秋、特別版「Free! -Take Your Marks-」が劇場上映されること。
http://iwatobi-sc.com/」。
これに関して鈴木達央が、「ハイ☆スピード!」は「Free!」シリーズの映画であり、「Free!」に繋がる話として位置付けられているにもかかわらず、どう考えても繋がりそうにないこと、そのことで誰もが「モヤモヤ」を感じているだろうこと、誰かが裏切られるのを見たくないこと、皆が幸せになるべきであること、ゆえに過去の「Free!」を再構築して「ハイ☆スピード!」に繋げたことを表明した。
要するに、「Free!」再構築の宣言。ことに「もう誰も傷付きません!」という鈴木達央の言葉が力強く、頼もしく響いた。
テレヴィアニメ「Free!」の最終回から「Free!ES」にかけての展開は、竜ヶ崎怜、橘真琴、七瀬遙、葉月渚を(そして何よりも原案、原作の小説を)散々傷付けた点において無茶苦茶としか云いようのない内容だったから、もし本当に「ハイ☆スピード!」の延長上に「Free!」が正しく接続されるなら、そしてそのために過去の「Free!」が新たに大幅に再構築されるなら、それはテレヴィアニメ制作者自身によって傷付けられてしまっていた物語、登場人物、そして原案小説の救済であり得る。
本当に救済されるのだろうか。
実は少々不安がないわけでもない。
第一に、「裏切り」の例として、岩鳶高等学校水泳部の四人組の内二人(の声優二人)が「ハイ☆スピード!」に出番を得なかったことが挙げられていたが、これをそのまま受け取るなら、まるで「ハイ☆スピード!」の側が人々を悲しませたかのように聞こえる。しかし人々を悲しませ、「モヤモヤ」を感じさせたのは「Free!」の最終話と「Free!ES」であって、むしろ「ハイ☆スピード!」こそが救済になっていた。鈴木達央も島﨑信長もそのように考えていたろうことが「ハイ☆スピード!」関連の書籍等で感じられたし、特に島崎信長は明確にそのように語っていた。それがここに来て逆転した話になっているように思われるのを一体どう受け取るべきか。
第二に、劇場版「Free! -Timeless Medley-絆」と「Free! -Timeless Medley-約束」はテレヴィアニメ「Free!」と「Free!ES」の再構築であると宣言されたが、説明によれば、「ハイ☆スピード!」の登場人物が登場し、「ハイ☆スピード!」に繋がる話が組み込まれるとはいえ、基本は「Free!」と「Free!ES」のダイジェスト版であるらしい。そうであるなら、物語の味付けを変えるにしても骨格を保持するに相違ないが、「Free!」と「Free!ES」の問題は物語の骨格にある。そこが保持されるなら、橘真琴が傷付けられ、原作小説「ハイ☆スピード!」が傷付けられることは何も変わらないのではないのか。
しかし今は、鈴木達央の「もう誰も傷付きません!」という力強い言葉を信じておきたい。