Mの悲劇

TBS日曜劇場「Mの悲劇」。石井康晴演出。橋本裕志脚本。稲垣吾郎主演。第三話。どう考えてもこれは日曜の夜九時という平和な時間帯に放送できるような番組ではないと思うが、番組そのものとしては異様に面白い。
今宵の話で明かされた事実の一つ。石橋を叩いて渡る用心深い小心者の安藤衛(稲垣吾郎)に対する下柳晃一(成宮寛貴)の恨み。それには充分な説得力がある。要するにそれは「会議室」に対する「現場」の怒りということだ。会議室の連中は自分たちの軽薄な、多分に気紛れでさえある企画立案なるものが作業の現場に一体どのような困難や苦痛をもたらすことになるのか、全く想像できないし、全く想像しようともしない。現場の思いなど会議室の連中は考慮しない。だから現場の人々がどのような恨みを抱いていようとも、会議室の側には何一つ覚えはない。だが、まさしく「何一つ覚えがない」ことこそが恨みを買っているのだ。
他方、正体不明のストーカー相原美沙(長谷川京子)の安藤衛への恨みは、今宵の話で明かされた限りでは、何の説得力もない。それは単なる八つ当たりに過ぎない。とはいえ全ての事件の本源をなすはずの事実がこうして早くも明かされたということは、実際にはさらにその彼方に驚異の真相が控えているだろうことを想像させる。手に汗握りながら期待しておこう。
それにしても下柳晃一役の成宮寛貴にはオレンジ色の上着がよく似合っていた。流石だ。