不機嫌なジーン

フジテレビ「月九」ドラマ「不機嫌なジーン」。第三話。竹内結子主演。
全く面白くないわけではないのに全体としては駄目であると判定せざるを得ないのは、時々挿入されるアニメとか最後の「おさらい」とかの面白くなさ加減を別にしても、登場人物の感情表現に妙に唐突なところがあり、早くも破綻の兆しが見えるからに他ならない。先週の第二話では仁子(竹内結子)がテントウムシオ=健一(黄川田将也)とのデイトの只中に、自分に対する彼の理解の程度について自信を失くしたのか、何事も常に虫を基準にしてしまいがちな自分の思考と行動について反省するという描写があった。先週ここに述べた通り、この描写の挿入の意図は一応は理解の範囲内にあるが、余りにも唐突だったので違和感を抱いたものだった。
だが、今週のはさらに唐突だった。仁子と健一とのデイトの途中、虫のことで熱くなった仁子に対し健一が怒ったのだ。本当はもっとの普通にデイトを楽しみたいのに!と。だが、もし健一が仁子の虫への愛好や他人への説教の癖をよくは知らないのであったならこの描写は成立するのだろうが、生憎そうではなかったはずだ。健一は確かに虫を愛さないかもしれないが、虫を愛する仁子を愛していたではないか。だからこそ前回の仁子の突然の反省の場面でも、彼は仁子に優しく接して慰めたのではないのか。
要するに今回の健一の唐突の怒りは、前回の仁子の唐突の反省に対する健一の慰めを自ら否定する行動だったわけだ。
だが、何故このような変異が生じたのか。倦怠期を迎えたのか。それでは先週放送分の話から今週放送分の話までの間に一体どれだけの歳月が流れたわけだろうか。無論わずか数日間のことだろう。そうであれば倦怠期ではないだろう。だからもし今回の健一の苛立ちが正直な感情であるなら、前回のあの慰めは嘘の感情によるものだったことになる。嘘ではないと了解することができるためには、あのような唐突な苛立ちを惹起するに足る何らかの描写が事前に必要だったろう。仕事で失敗してしまい他人への思いやりを心掛ける余裕を欠いていたとか、何かそういう類の。特別な事情もないまま突然に怒り出すような人物は一般には病的と見做される。でも健一は「テントウムシオ」の愛称から想像されるように、接する者を癒してくれるような柔らかく愛らしい男子ではなかったのか。まさか正体は違うのか?それだったら逆に面白くなるのかもしれないが、物語はとんでもなく脱線してしまいそうだ。