不機嫌なジーン

フジテレビ「月九」ドラマ「不機嫌なジーン」。第五話。竹内結子主演。
仁子(竹内結子)に対するテントウムシオ=健一(黄川田将也)の怒りの場面は第三話にもあったが、余りにも唐突に過ぎたので何の説得力もなかった。それに比するなら今回の彼の怒りには説得力があった。逆に云えば仁子が余りに身勝手に過ぎるのだ。緊急の仕事で忙しくて待ち合わせ時間に遅れるという事態は無論あるだろうが、その場合、大幅に遅れてしまう旨を、或いは約束通りには行けそうもない旨を早めに伝えておくべきだったろう。各方面との連絡調整で忙しくて健一との連絡を取れなかったにせよ、一分間か数十秒間かの余裕もないわけではなかったろう。その後、待ち合わせ場所に出向いた仁子が、そこに既にいなかった健一に電話をかけたとき、目の前を当の健一が他の女と一緒に歩いているのを目撃して、しかも男の友人と一緒にいると嘘をつかれて、それで傷付いた道理は一応は理解できなくはない。でも研究室に籠って延々泣き続けた姿を延々見せられても、仁子に同情することはできない。仁子は健一が見せた程の誠意を見せていないからだ。
このドラマ作品が明白に駄目であるのは、制作にあたり企画者が欲求し待望していたのが何であるか、明白に透けて見えてしまうからに他ならない。フジテレビ「月九」に相応しく「恋愛ドラマ」であることによって若い視聴者を集めた上で、そこに環境問題を持ち込み社会性をも添えることで何か深みをも感じさせ、またアニメ等を挿入して作風上「月九」らしくはない前衛性をも演出することで批評家たちの評価をも得る…という展開を、企画者は期待し欲望していたに相違ない。だが、全ては裏目に出たわけだ。恋愛ドラマの要素を素直に出さなかったことで恋愛ドラマの要素までも相殺されてしまった。フジテレビ「月九」は所詮「月九」だ。昨年冬の成功作、織田裕二主演「ラストクリスマス」のような正統派の恋愛ドラマをやっておけばよいのだ。