富豪刑事

テレビ朝日系-木曜ドラマ「富豪刑事」。筒井康隆原作。福田卓郎脚本。常廣丈太演出。深田恭子主演。筒井康隆準主演。第九話。
富豪刑事の美和子(深田恭子)が捜査のため強引に創設した高校ラグビーの強豪「焼畑学院高等学校」。ラグビー部のコーチをつとめるのはもちろん焼畑警察署刑事課長の鎌倉警部(山下真司)。顧問をつとめるのは英語教師に成り済ました鶴岡刑事(升毅)。部員たちの中には、焼畑市内では最高のラグビー選手と評価されていた小栗幸輔(内田朝陽)がいた。彼は焼畑市内随一のラグビーの名門「南条高等学校」の有力選手として将来を期待されながらも退学処分に遭い、焼畑学院に転入したのだ。焼畑学院高等学校ラグビー部の創部早々の対戦相手がまさしく南条高等学校ラグビー部で、そこのコーチは「ウルフ」と呼ばれた往年の名選手、熊谷雄司(松村雄基)。
鎌倉警部役の山下真司と熊谷役の松村雄基が往年の名作ドラマ「スクールウォーズ」でラグビー部のコーチと選手の関係にあったのは云うまでもない。山下真司は滝沢賢治、松村雄基は大木大助。そういえば今宵の焼畑学院高等学校ラグビー部にも滝沢という生徒が入部していたようだ。美和子が捜査のため潜入した高級クラブで偶然「黒革の手帖」を目撃したことも含め、実に今宵のドラマはパロディに満ちていて盛り沢山だった。焼畑学院高等学校と南条高等学校との試合の直前、ラグビー部員たち全員を集めて鎌倉コーチが「お前たちは、腐った大人にはなるな!小栗、俺を殴れ。殴れ!」と絶叫した場面は、見事に青春ドラマ風で、実によかった。で、「殴れ」と云われて迷いなく直ぐ殴った小栗幸輔。面白くて少し悲しい鎌倉警部。でも試合に勝利したあとの胴上げを見て、やはり山下真司が青春スポーツ根性ドラマの偉大な英雄だったことを再認識できた。
盛り沢山という点で云えば、焼畑警察署の人々がそれぞれの個性を存分に発揮したのも楽しかった。ヤクザ風で、やたら頼もしい布引刑事(寺島進)。計算機の名人、西島刑事(載寧龍二)。変わり身の早い鶴岡刑事の、インチキ英語も健在だった。また今宵は美和子専属の運転手、伊東隆行(虎牙光揮)も台詞が多かった。世間の常識から外れた美和子の勘違い発言の連発も傑作だったが、最後には「たった三億円ぽっち」発言も聞けた。